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米ロのサイバー対話について、クルーツキッフ特別代表へのインタビュー記事

この5月から6月にかけて、身代金要求型ウィルス<WannaCry(ワナクライ)>が一気に大流行して世界中が驚愕したニュースは、まだ皆さんの記憶に新しいと思います。インターネットのお世話になっているのに、こうしたテクニカル分野は超苦手の私でさえ、いったいどうなっているんだ?と、にわか知識をかき集めて必死に理解に努めたぐらいです。これほど一気に世界中に広まった理由は、インターネットやLAN経由で虫のように自己複製して感染・拡散していく機能を持ったウィルス<ワーム>だったからだそうですね。どういう構造になっているのかは、さっぱりわかりませんが、大変な事件だったことだけはわかりました。
一方、こうした状況にあっても、情報安全保障分野での国際協力は一向に進展する気配がありません。米ロのサイバー対話がうまく進んでいないことがその大きな要因だと指摘されていますが、7月11日付イズベスチヤ紙電子版(http://iz.ru/)に、情報分野の国際協力問題に関するロシア大統領府特別代表のアンドレイ・クルーツキッフ氏のインタビュー記事が掲載されていました。
ある意味、ロシア側の立場を代弁しているので、抄訳でご紹介しておきます。

「情報安全保障分野の国際協力問題に関するロシア大統領府特別代表アンドレイ・クルーツキッフは、イズベスチヤ紙とのインタビューで、この分野における米ロ対話について、モスクワが国連レベルで仮想空間の国家行動共通原則を推進していること、また、テロリストたちが諸国家をサーバー空間で対立させようとする可能性について、語った。
―米ロ間には2013年から情報通信技術利用分野で互いの信頼を図るための合意体系があり、テロ行為並びに国家の死活的に重要なインフラに対する攻撃を含めて、国際情報安全保障に対する脅威範囲を全面カバーする情報通信技術利用サミットもある。これらの信頼手段は三つのレベルで情報交換の機能的関係ラインを想定している。すなわち、国家安全保障問題を扱う高官間レベル、警察および軍関係省庁間レベル、死活的に重要な情報施設への攻撃を通知するため核の脅威の減少に努めている国家センターと、ネット上の悪意ある行動をモニタリングするためコンピューター関係の突発事件に対応する用意のある専門家グループ間レベル、以上3方面での関係ラインである。合意文書には各レベルによって提供される情報の量とレベルとフォーマットが明記してある。
ホワイトハウスの主の顔が交代し、その後の政府人事も混乱していることで、公式対話の進み具合は鈍いものの、誰もこうした合意事項を破棄してはいない。その効果は、特に2014年のソチ冬季五輪で証明された。このように、技術的なシステムはテスト済みで、常時機能している状態にある。
―サイバー空間での突発事件を防止する2国間協定の作成は依然として焦眉の課題である。ここでのキーワードは、防止だ。ロシアと米国は大国である。サイバー空間を含めて両国間に対立が生じうるということは、全世界にとって運命的な結果をもたらしうる。米国人たちが、分別のある国民として、このことを理解していないわけがない。我々2国間の歴史には、潜在的に危険性のある分野に触れる類似の協定を結んだ前例が存在する。
公海と両国それぞれの領有空間における突発事件を防止するソ連邦と米国間協定がそれである。1972年に結ばれたもので、実際に両国間の緊張度を実質的に引き下げた。
―国連の国際情報安全保障に関するサイバー空間会議の成果となるべきは、その総括報告である。この報告は推薦的な性格を有しているとはいえ、国際情報安全保障への基本的な姿勢を国際レベルにおいて固める重要な報告だ。
ロシアの基本的な提唱は、情報空間における各国の責任ある行動規範に関する国連総会決議案を作成するために、2018年に再び招集されると予想されるサイバー空間会議を準備する必要性についての条項を報告に含めることだった。この国連決議は情報安全保障システムの基礎を据えるはずのものであった。残念ながら、すべての国が我が国の調停的なアプローチを共有しているわけではなく、デジタル分野での<強者の権利>を守り抜こうとして、防止ではなく対立の調整に基づいたそれぞれ独自の国際情報安全保障観を執拗に推し進めようとしている。言い換えれば、西側政府は国際共同体の眼の前で情報空間をさらにもう一つの<作戦環境>、軍事行動を遂行する環境として描き出そうとしており、これはNATO内の文書にもすでに記載してあることだ。
さらに西側諸国は、国際情報安全保障に関する交渉過程で国連の役割を軽視する路線を取った。このテーマを、世界のすべての国々の利害を代表する国連で議論する代わりに、その討議を地域舞台や地域フォーラムに沿って<ばらばらに>しようとしている。そこではロシアその他の独立した考え方を有する国々の不在に乗じて、調停には程遠い自分たちのイニシアチブをはるかにたやすく<推し進めていく>であろう。
別個に申し上げておかなければならないのは、西側でロビーイングされている潜在力を増大していくプログラムについてである。デジタル格差を克服するという美辞麗句、発展途上国への援助、共同科学研究と開発は、ドイツ政府によって準備された報告に反映されているただ一つのテーゼによって<相殺されている>。技術的に発展した先進国には情報通信技術製品に潜在的な機能を導入する自分たちの可能性を放棄しない権利がある、というテーゼだ。そうした可能性は制限できるだけであるとする。これは明らかに、多少その名を知られているエドワルド・スノーデンが世界に語った地球規模でのスパイ活動と破壊活動に対する大国の権利を強化するものである。
結局、予想通り、報告は採択されずに終わった。我々としては、今後はBRICs,上海条約機構、独立国家共同体、集団安全保障条約機構のパートナー諸国、そして発展途上国の中で考えを同じくする国々と共同で、この国際情報安全保障システム自体を樹立する作業を行っていくことになるだろう。
―私としてはこれを<歴史>ではなく、<物語>と呼びたいところだ。こうした<物語>を、若干の西側諸国は行動共通原則の採択を引き延ばすために、自分たちの内政問題や軍事的サイバー空間の準備をカムフラージュするために利用している。西側のメディアはロシアを欧米の生活スタイルの最も神聖な部分、その民主主義的土台を食べているモンスターのように描き出している。
もちろん、非難はすべて根拠のないものである。ロシアは西側諸国に我々が<破壊行動を行っている>とする根拠を文字通り<問いただした>が、お決まりの事実無根の非難以外に何も返ってこなかった。明らかにこのキャンペーンは決して偶然のものではなく、西側でうまくシンクロしている。
ここで次のような疑問が生まれてくる:もし我が国のハッカーたちがそれほど絶大な力を持っているのならば、なぜまさにロシアが情報空間における国家及び非国家の有害な活動に反対する方向の調停的イニシアチブを不変に掲げて国際裡で発言しているのか? なぜ我々こそが仮想空間における責任ある行動の原則を採択することを求める発言をし、一方で我々を非難するものたちが一斉にこのプロセスをさぼっているのか? この疑問は決してレトリックではない。それに対する回答はわがパートナー諸国たちによって一度も声に出されていないとはいえ、である
もう一つの問いかけ、もしわれわれがそれほどサイバー全能者であるのならば、それならばなぜ我が国のハッカーたちは<羊の皮>を被り、ロシアから遠く離れた誰かの仮面を被ることができなかったのか? もっともこれは修辞的疑問になってしまうが・・
―ウィールス<Wanna Cry(ワナクライ)>は150か国で20万人以上に感染した。攻撃はシステム的な、分散的な性格を有しており、私の見るところ、試験的な性格も有している。各国の悪意ある者たちが死活的に重要な一連の施設を選択し、サイバー犯罪とサイバーテロにはいかなる国境もモラルの規制もないことを、不遜にも全世界に実証してみせたのである。銀行網だけではなく、病院やエネルギー供給施設、交通網、さらには軍警察機構までが攻撃を受ける可能性がある。
ロシアと多くの国々はあらゆる国際舞台やフォーラムの場で、まだ手遅れにならないうちに、あれこれ頭をひねり回して犯人探しをするのではなく、よく話し合って合意に達しようと粘り強く呼びかけている。サーバー空間に起因する脅威による損害は、その政治的姿勢に関わらず、すべての国家が被るものなのである
それにもかかわらず、一部の国々は、仮想世界が現実世界に及ぼす影響の大きさを理解できなくはないのに、自分たちの技術的優位を隠し持つことを計算してか、この分野において国家の責任ある行動原則を採択する過程をサボタージュしている。彼らはサイバー空間に生まれつつある<無限というもの>に関心があるような印象さえ受けてしまうのである。
―サイバー空間に起因する脅威は<よく知られている普通の>脅威と同レベルに並んだだけではなく、すでにそのレベルを超えている。損害の数字は何十億何兆といった単位で計られているのである。
情報通信技術はバーチャル空間で作動しているとはいえ、すこぶるリアルな影響を生む。情報通信技術の有害な利用に事が及ぶと、それが現実的で規模の大きな、原則として攻撃的なやり方で利用されていることを我々は思い知るのである。軍事政治分野において、情報通信技術は、一般に抑止あるいは報復の武器と呼ばれている核兵器と違って、明白に手っ取り早い日常的な武器となる。
テロリストたちは、リクルートやプロパガンダや民族間の不和を燃え上がらせるためといった自分たちの犯罪目的のためにうまくインターネットを利用している。彼らのプロフェッショナルな技術力がよりグローバルな<プロジェクト>のためにサイバー空間を利用することを可能にする日もそう遠くはないだろう。したがって、もし国際共同体が近い将来デジタル環境における国家の責任ある行動原則の採択で合意できなければ、テロリストたちは国と国を互いに対立させようとするだろうし、間違いなくそうしてくるだろう。」



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