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ロシア大統領選投票結果と投票日直前のプーチン教書演説

3月18日に行われたロシア大統領選の結果、現職のプーチン大統領(65歳)が76%を超す得票率で圧勝し、何事もなければ通算4期目の2024年までロシアを率いることになりました。
他の7人の候補者たちの内4人の得票率は1%にも及ばす、プーチン政権批判を前面に押し出した元TVキャスターのクセーニヤ・サプチャック氏の得票率は1,5%で、これはロシア世論調センターが9日に行った調査で投票に行かないと回答した3%を下回りました。ちなみに、この3%の中には、大統領選のボイコットを呼びかけたアレクセイ・ナヴァルヌィの支持者らも含まれています。

ウラジーミル・プーチンは3月1日に、ロシア指導者として14回目となる異例の年次教書演説を行いました。会場を大クレムリン宮殿のゲオルギエフスキー・ホールから中央展示場<マネージ>に移し、両院議員の他に政府関係者、憲法裁判所および最高裁判所長官、検事総長、中央選挙管理委員会・会計検査院・社会院の長たち、各地方・地域の指導者たち、その他の高官たち、主要宗教の長たち、マスコミ代表らが招待されました。
大統領広報官が、今日ロシアの指導者は現職大統領として、また次期大統領候補者として演説すると前置きして始まったプーチン氏の演説は、大まかに次のような内容のものでした。

「今日の年次教書演説は、我々が今生きている時代のように、特別な変わり目となる性格を有している。この先数十年間の我々の国の運命が明確にされるのである。我々は大規模な変革を通過し、国家の統一を維持し、民主主義社会を確立し、生活のほぼ全分野で安定性を確保した。
安定性は基盤であり、さらなる発展を担保するものではない。我々は自己安堵を許容することはできない。国民の生活の質の保障という観点から見て、我々はまだその目的を達してはいない。
すべての基礎にはロシア国民の貯蓄がある。そのためのしっかりした土台は築いてある。我々は新たな課題を解決できる。我が国の経済は安定性を示した。安定したマクロ経済状況と技術革命が突破口の基礎を作り出している。
誰が次期大統領に選出されようと、我々は皆、どういった挑戦を受けているかを感じ、理解しなければならない。テクノロジーの波に乗る者は先頭に躍り出るが、波はそれ以外の者たちは飲み込んで沈めてしまう。彼らは主権を失ってしまうのである。
立ち遅れれば人の潜在力は弱められ、流失してしまう。若くて教育も才能もある人々は成功している国々に出て行ってしまうだろう。世界の変化は文明的性格を有している。我々は真の突破に答えを出す用意がある。
前進するために、我々は民主主義と市民社会を含めたあらゆる分野で自由の空間を広げなければならない。立ち遅れ、これこそが大きな脅威であり敵である。もし我々が状況を打ち砕くことができなければ、慢性病は強まっていくだろう。いかなる障害物も我々の前進を邪魔しないように、そうしたダイナミックな発展を保障する必要がある。
何を優先させるべきか? 人々の平穏無事であり、ロシアの家庭の豊かさである。2000年には29%が貧困家庭だった。2012年までに、我々はこの割合を10%までに下げた。その後、危機のために貧困率は再び上昇した。働いていても、貧しく暮らしている人たちもいる。我々は雇用構造を刷新し、現代的でしかるべく報酬を支払われる職場を作っていかなければならない。国民の長期的でしっかりとした所得増大と貧困率の半減を保障しなければならない。
「人口学」 我々はネガティブな人口学的傾向に打ち勝っている。二度の人口学的落ち込みの結果を緩和した。2017年に勤労可能者人口は百万人減少し、この傾向はしばらく続き、勤労可能者の数が足りなくなるだろう。この危機に備えていく必要がある。母親基金と特恵貸付プログラムが実施されており、子供総合診療所の刷新プログラムが始動し、保育園問題はほとんど解消されている。
今後6年間で母子保護に3兆から4兆ルーブルを回す必要がある。これは巨額だが、現実的な数字である。我々の道義的義務として年長世代を支えることもある。年配層は健康で長生きする条件を持たなければならない。年金額をスライドさせて、年金受給者の現役時代の給与額と年金額の差を縮めなければならない。新政府は、年長世代の生活の質を支援し保障する特別プログラムを準備しなければならないだろう。
我々は国民一人当たりのGNPを1,5倍に増やさなければならない。難しい課題であるが、解決する用意がある。2000年当時の男性の寿命は60歳以下だった。これは悲劇である。今、この指数は世界で最も高い数字の一つとなっている。目標を立てなければならない:今後10年間が終わるまでにロシアは長寿国の仲間入りをすること。活発な健康寿命を伸ばさなければならない。
「経済と金融」今後6年間に追加手段を取る必要がある。まず、国庫支出の効率性をアップし、個人資本をもっと誘致する必要がある。課税条件を改善する必要がある。予算を補充し、同時に成長を刺激するような財務処理が必要である。世界より成長率の高い経済が必要である。これは難しい課題だが、基本条件でもある。これは新政府の仕事の鍵となる目標だ。
エネエルギー価格に頼る率は減少した。全体的に見て物価はまだインフレ率より高いものの、低いインフレ率が発展の基盤を与えてくれている。ついこの間のインフレ率は13%であった。今、マクロ経済の現実は違う。低いインフレ率、安定した経済、投資家たちの信頼に足りうる環境だ。我々には今、このインフレ水準を維持しながら、政策金利を引き下げることが可能である。ロシア銀行の支援を期待している。
原則的に異なったレベルで成長源が働きださなければならない。基幹産業分野の労働生産性を向上させ、年率5%の成長が必要だ。これは賃金が増えるということでもあり、すなわち、消費需要が増えるということで、経済発展の補足的な推進力となる。もう一つの成長源は投資の拡大だ。我々は投資をGNPの28%にまで到達させるという課題を達成できなかった。政府とロシア銀行がどうやってこれを保障するかというプランを提示することを期待したい。1年間で2つに1つの企業が技術変革を実現するレベルにまで達する必要がある。
第三の成長源は中小企業である。資金繰りに苦労するが、現在は低い金利の貸付プログラムがある。さらにもう一つの成長源が資源外の輸出拡大だ。ここではあらゆる障害を取り除かなければなない。輸出サービスを発展させていかなければならない。
我々はもはや輸入食糧に頼ってはいない。4年後には、他国から買うよりも多くの食糧を他国に売っているだろう。農園と種子企業を支援しなければならない。記録的な収穫に感謝したい。ソ連邦時代の記録的な収穫を上回るものだった。こうした豊作には裏の面もあり、価格が下がり、貯蔵もより困難となる。生産者は加工と輸送に特恵を与えられるだろう。
根本的にビジネス風土を改善する必要がある。経済における国家の役割は徐々に縮小していかなければならない。エネルギッシュに市場に資金を出して行く必要がある。刑法法典は争議解決の道具となることや止め、行政的な観点に切り替えていく必要がある。審査数は形式的には減っている。諸々の審査は特例となるべきである。駆け出しの企業家たちを支援することが重要である。納税報告を簡素化する。これはしきたりではあるが、エネルギッシュな前進を可能にしてくれるものでもないからだ。
「軍と防衛」シリア作戦はロシア軍の潜在力が増大したことを示した。全般的に軍事力が大幅に増強され、新型ミサイルで刷新された。全世界は我が国の新型飛行機や軍備の名称を知っている。ロシア国境全周に隙間なくミサイル防衛レーダーが張り巡らされた。ロシア連邦国家防衛管理センターが創設された。
米国はミサイル防衛条約から離脱した。すでに2000年に彼らはこの条約を疑問視した。我々は断固反対した。この条約は国際安全保障システムの要であると考えていたからである。この条約は、どちらの国も核兵器を使用しないという担保だった。我々はこのシステムを壊さないように長い間米国を説得し続けた。すべてが無駄だった。米国が離脱した後も、我々は建設的な対話を試みた。妥協点を見つけられるだろうという気がした時もあった。しかし、違った。我々は、攻撃コンプレックスを一層完全なものにする、と声明した。それに対して、ロシアを念頭において対サイル防衛システムを拡大しているわけではない、と米国側は回答した。
ソ連邦崩壊後、ロシアはその領土、人口、GNP, 軍事的潜在力をかなり失った。我が国の企業に米国の軍検査官が居座った。ロシアは借金まみれだった。経済は国際貸付無くしては機能しなかった。我らがパートナー諸国には、ロシアはその潜在力を伸ばせないから、さらに突き進んで、確定的な軍事的優位を獲得することが必要だ、と思えたのだろう。
この点では我々も悪い。しかし、米国が同条約を離脱してから15年間も、我々は彼らと話をしようとしてきたのである。CHB-3条約も結ばれた。しかしながら、地球規模でミサイル防衛システムを構築する計画が実現されていく中で、すべての合意は徐々に意義を失っていってしまった。米国は対ミサイル数を拡大し、新たな陣地を築いている。これは、ロシアの核潜在力の価値を完全に落としてしまうかもしれない。アラスカとカルフォルニアでミサイル防衛システムが作動している。ルーマニアとポーランドで展開され、間もなく日本と韓国にも導入されるだろう。事は全速力で進められている。
ロシアはこうした挑発にどう応えたか? この数年間、我々は集中して有望な技術と軍備の開発に努力し、戦略兵器の建造に努めた。ロシアでは、ミサイル防衛に打ち勝つ、価格面では極めてつつましいシステムが開発された。新世代ミサイルの開発にも着手した。<ヴォエヴォーデ>に代わる<サルマータ>の実験にも着手している。<サルマータ>の潜在力はより高く、飛行活動部分が短いため、ミサイル防衛システムで捉えにくくなっている。
世界では無人飛行システムやより深くより遠くに動くことのできる様々な機器が製造されており、それはまったく素晴らしい。音を立てず、機動的で、これに抗するシステムは世界に存在しない。
極超音波武器の開発も行われている。ロシアは世界に類似品のない武器を持っており、実験はすでに行われている。極超音速ミサイルも機動作戦を実現させる。我々はこのシステムを<キンジャル>と名付けた。真の技術的突破口は滑空巡航ブロックを有した戦略的任務のミサイル戦略コンプレックスの建造である。
私は2004年にも、一連の国家が質的にも量的にも軍事潜在力を増強させている状況下で、我々は現代的な武器を持つ必要がある、と言った。我々が創造したようなシステムは、世界の他のどの国にもない。我々は自分たちの計画を秘密にしたわけではない。パ―トナー諸国に我々と交渉を行うよう率直に言い続けてきた。しかし、本質的には誰も我々と話をしたくなかったのだ。誰も我々の言うことに耳を貸さなかった。今こそ、我々の言うことに耳を傾けるがいい。
あなたたちの多くは褒賞のために働いているわけではない。私はあなたたちの努力とその成果に感謝している。今日のわれらが祖国にとってとても必要なものである。我々はあらゆる分野の課題を解決する潜在力を拡大していくだろう。こうしたロシアの発展は確実で、堅持されていくだろう。
今日私の述べたことすべてが、我が国に対するいかなる潜在的侵略の酔いもさまさせてくれることを期待する。我々に対して力を行使しようとする試みは無意味である。我々は義務に応じてパートナー諸国に伝えるべきだった。我が国の国防能力を強化する仕事はすべて、合意事項に即して行われたものであった。我々は誰も脅かそうとはしていない。これは平和の保障、戦略的均衡の維持なのである。軍拡を進め、戦略的優位を獲得したいと思っている者たちに私は告げる。あなたたちが邪魔したかったものすべては実現された。ロシアを抑え込むことには成功しなかった、と。
全世界が転換期を迎えている。変化に対応できる者が指導者になるだろう。我々は常に独自のゆるぎない路線を歩んできた。我々の団結こそ、今後の発展のもっとも堅牢な基盤なのである。」

投票当日の18日の夜、クリミア半島のロシアへの併合から4年を祝う野外集会&コンサートが開かれていたマネージ広場に姿を見せたプーチン氏は、支持者たちに当選への感謝を示しました。ここでも強調されたのが<団結>です。
「多大な支援をありがとう。今日、ここモスクワに集まった人々にも、広大な我が国の全領土に散らばっている支持者たちにも、私は言いたい。私たちは一つのチームであると、そしてわたしはそのチームの一員であると。きょう投票した人々は皆、一つの大きな全国民的なチームなのです。私はこのことに、この数年間の極めて厳しい状況下で成し遂げてきたことが認められたのだと、我々がこれからも緊張感と責任感を持って、そしてより良い成果をもたらすべく、仕事をしていくことに人々が信頼と希望を寄せているのだと思っています・・・成功が我々を待ち受けています・・・他の候補者たちに投票した人々をこちら側に引き寄せることは非常に重要です。前進するためにはこうした団結が必要なのです。前進するために、我々は国民一人一人との連帯感を感じなければなりません・・・」
プーチン氏はまた、今後仕事をしていく中で、ロシアは短期的で時局的な思惑に従うことなく、未来について考えていくだろう、とも述べています。

ロシア社会は今、<安定を求める声>と<変化を求める声>に二分されている、という報道もあります。特に1980年代以降に生まれた若い世代はソ連時代も知らず、中にはソ連崩壊後の苦難の時代も覚えていない若者たちもいますから、今回の選挙でプーチン氏は若者層の動向にはことのほか神経をとがらせました。
プーチン氏が<安定>だけでは<突破口>は開けず、やがて<停滞>と<閉塞感>が蔓延していくことを十分に自覚していることは、教書演説からもうかがえますが、国内外に杞憂を抱えての第4期目のスタートです。今後の政権運営は果たしてどういったものになっていくのでしょうか? そして、もう一つ、少なくともロシアに関心を持っている限り、必ずやってくるプーチン後に想像をたくましくするのも大事なことではないかと私は思っています。
余計ですが、ウラジーミル・プーチンも歳をとりましたね。スマホも持っていないそうですけど・・・




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