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国営企業<ロスナノ>の投資部門トップマネージャーの逮捕

<ロスナノ>と言えば、2007年に国内のナノテクノロジーを発展させるために設立された優良国営企業だと思っていました。ロシア国内の報道によれば、現在は88社を傘下に抱えて自己資金を投入し、基礎研究開発をビジネスとして成り立たせるべく、共同出資者を探す回路としながら、モスクワ、ノボシビルスク、ゼレノグラードその他の都市に11のナノセンターを所有し、独自の技術基盤でイノベーション製品を生産する工学技術企業も8社所有しているそうです。
その<ロスナノ>の投資部門のトップ、アンドレイ・ゴーリコフ部長が、職権乱用で同社に膨大な損害をもたらしたとして、国外に高飛びするための航空券を購入した直後に逮捕されました。この逮捕劇の裏には、ロシア内務省経済安全保障&汚職防止主局とロシア連邦保安庁経済安全保障部局の緊密な連携があった、とも報じられています。
6月11日付のインタファクス通信(http://www.interfax.ru/)は、取調べ委員会のスヴェトラーナ・ペトレンコ委員長の報告から、取調べ方向の概要を次のようにまとめていました。
「ゴーリコフは2011年から2013年末まで、株式会社<ロスナノ>とその唯一の株主である国家の規定手順と利害に反して、同社から有限商業金融機関<スモーレンスキー銀行>に、決済業務と見せかけて実際は同銀行の金融活動目的で恒常的に4億6000万ルーブルから7億4000万ルーブル(約2億4400万円から3億9400万円)の資金を配分していた。2014年12月13日に<スモーレンスキー銀行>の営業ライセンスが取り消されたことにより、株式会社<ロスナノ>は7億3800万ルーブル以上の金融資産を失った。そのうえ、ライセンス取り消しのまさに前日に、ゴーリコフの実弟宛てに不動産物件取引に見せかけて総額4億ルーブルの資産が銀行から引き出されていた。」
モスクワのバスマーヌィ裁判所は、こうした取調べ委員会の報告を納得のいくものであると認め、エレーナ・レンスカヤ裁判長が6月11日に「被告人ゴーリコフに対し、1か月と29日間すなわち2017年8月9日まで拘禁という形の保全処分を選択する」判決を申し渡しました。
インタファクス通信(同上)は、
「かくして、取調べを拒否し、拘禁、特に自宅拘禁にはいたらない保全処分の選択を求めていたゴーリコフ弁護側の申請は却下された。
会議で取調べ官は、逮捕以外のいかなる保全処分も当案件について妨害のない調査を保証することはできないと伝え、もし拘禁しなければ、ゴーリコフは告訴の重大さを自覚して姿をくらまし、証人たちに影響を及ぼしたり、取り調べを妨害しようとしたりする可能性がある、と懸念を申し立てた。
弁護側は、ゴーリコフの行動によって<ロスナノ>にはいかなる損害ももたらされていないと主張し、裁判所に出向いて同社の理事長代理にこれを証明する用意がある、としている。セルゲイ・ドローズダ弁護士の言葉によると、まだ営業ライセンスを失う前に<スモーレンスー>銀行が<ロスナノ>に負っている債務を果たし、今回の案件で示されている損害額を上回る資産を同社に譲渡していることを証明する文書を保有しているという。
一方ゴーリコフ自身も、自分に罪があるとは認めないが、これまでにも何度も<ロスナノ>絡みの他の件で取調べ官の呼び出しを受けているので、今回も自分に警告するつもりであればと思ってそうした、と述べている。トップマネージャーは、自分が今回の事件の踊り手となっていたとは一切知らなかった、と強調した。
弁護団は、逮捕は厳しすぎる処置であり、ゴーリコフはモスクワの登録住所に住んでいるわけだから、5000万ルーブルの保釈金ないしは最悪の場合でも自宅拘禁でいいのではないか、と重ねて主張している」と書いていました。
これでは逃れきれないだろうと国外逃亡を図ったあげく、結局ゴーリコフ氏は逮捕されてしまいました。
6月10日付ガゼータRU紙電子版(https://www.gazeta.ru/)によりますと、これまでにも<ロスナノ>前社長のレオニード・メラメード社長と前金融部長ウヴャトラフ・ポヌーロフが告訴された経緯があるそうです。5月末に、2億2000万ルーブル以上を使い込んだ罪状で、二人は3か月間の自宅拘禁を言い渡され、現在も近親者と訴訟手続き関係者以外との連絡を禁じられている、と報じられています。

<ロスナノ>の現在の社長は、かつてエリツィン大統領時代には<エリツイン・ファミリー>として大統領府長官や第一副首相兼蔵相を歴任、民営化を促進するとともに、新興財閥と組んでロシアの政財界に大きな力を持ったアナトリー・チュバイスです。
プーチン時代になってからは、その政治的影響力は弱まっていると言われますが、プーチン大統領の強権政治を批判し、<民主勢力の結集>と<自由主義経済>を訴え続けている、言わば<旧新興財閥勢力の生き残り>的存在の大物です。今のところ、ゴーリコフ逮捕についてのコメントは出していないそうです。
それにしても、ロシアの金融犯罪事件は、権益が二重三重に絡み合って闇のスケールが大きいですね、別に感心するような話ではありませんが・・・

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