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人気ブロガーたち、ロシア下院に招かれる

アレクセイ・ナヴァルヌィがメドベージェフ首相の汚職疑惑を告発するデオ動画をネットに流したことを発端として、今年の3月から4月にかけて、モスクワやサンクトペテルブルグで久々の大規模デモが繰り広げられ、その余波は全国各地に及びました。
特にそのデモの中に<若者たち>の姿、生まれた時からウラジーミル・プーチンが大統領だった世代が目立ったことに、国内外の識者たちは注目しました。彼らは、政権の監視と統制が行き届いたテレビ局等の主要メディアをすり抜けて、ネットを駆使して情報交換を行うロシアの<新世代>であり、プーチン政権の強力な<愛国プロパガンダ>もあまり効き目がない世代だと見られているからです。そもそもメンタル構造が違いますから。
そのことに政権側も気づき始めているのでしょうか、人気ブロガーたちを国会に招いて、何とか内側に取り込もうとする苦肉の策(?)に出ています。

6月19日付コメルサント紙電子版(https://www.kommersant.ru/)の記事です。

「今日、下院で議員と人気ブロガーたちが会談した。ブロガーたちは、青少年活動下院委員会(委員長は自由民主党議員ミハイル・デグチャレフ)の専門家会議に加わらないかと誘われ、下院副議長のピョートル・トルストイからも、『インターネット分野の立法に関わる専門家委員会に加わらないか』と誘いを受けた。彼らブロガーは、その大部分が若者で占められているソーシャル・ネットワーキング・サービスの利害というものを、議員たちが理解する手助けとなるからである。なかには<狩猟市場>での議員たちとの会談を<コムソモール集会>と名付けるブロガーたちもいた。
19日の月曜日、ブロガー評議会の初公開会議が下院で開かれた。下院に同評議会を設置する提案は、5月22日の青少年政策に関する国会審理の場で自由民主党議員ワシーリー・ウラーソフが行ったものである。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の<スター>たちに対する関心が議員たちの間で沸きあがったのは、3月26日の無許可抗議デモに若者や学生たちが大勢加わっていたことが判ってからのことだった。下院議長ビャチェスラフ・ヴォロジンは6月14日、交流すべきは『SNSではなく有権者だが、コミュニケーションの形はより有効なものを選ぶべきであり、この場合にはSNSも考えられうる』と発言した。若者たちと交流するために、同議長は特に<若者の国会>を活発化させることを提案したのであった。
国会でのブロガーたちの会議は非公式の形で行われた。しかしながら、国会の招待に対し、もっとも人気のあるビデオブロガーたち、例えば映画評論家エフゲニー・バージェノフ、カーチャ・クレップ、5月22日の国会審理では発言していたサーシャ・スピルベルグは応じなかった。<狩猟市場>に足を運んだブロガーたちが説明するには、彼らは『ここでコムソモール集会をやろうとしている』と思っているらしい。
とはいえ、足を運んだブロガーたちにさえ、何のために自分たちがここに集められたのか、よく理解できていないようであった。ワシーリー・ウラーソフから発言を求められたブロガーの中には、『何について話せばいいのかわからない』と率直に認める者たちもいた。会談に招待されたロシア大統領報道官の娘エリザヴェータ・ペスコヴァも発言を差し控えた。
『コムソモール集会など、とっくの昔になくなっている』と、自由民主党党首ウラジーミル・ジリノフスキーは、集まったブロガーたちをなだめた。彼は、ブロガーたちとは最初はただ会うだけでいい、『現実的な交流の方がバーチャルな交流よりも重要だからだ』と主張。まずは下院がそうした会合の場所となりうる、と述べた。『月曜日から金曜日まで、毎日でも集まってくれていい。ほかに場所を見つけたら、そこに集まればいいが、諸君たち自身がそんな場所がないと言っている間は、我々はここ下院にそうした場所を提供する用意がある。我々は君たちに定期通行証を作る。来てくれたまえ』と自由民主党党首は客人たちを誘い込んだ。
『国会はそうした場所ではありえない』と、Kremlin_Russianのブロガーだと自己紹介したコンスタンチン・トカチェンコはジリノフスキー議員に異議を唱え、自身の案<様々な意義のテリトリー>を提案した。トカチェンコ氏が考えているのは、大統領府も参加して組織される若者たちのキャンプである。クリャージマのキャンプは6月27日に開かれる、という。
ポルタル<レンタッチ>を運営するダニール・フィーリンは、『どうして我々があなたたちの方に出向いていかなければならなくて、あなたたちの方が我々の方に出向いてこないのか?』と議員たちに尋ねた。議員たちは、それはインフラが存在するからだ、と説明した。
ワシーリー・ウラーソフはブロガーたちに、青少年活動委員の専門家会議に参加しないか、と持ち掛け、自由民主党のボリス・チェルヌィシェフも、自身が委員長を務める同委員会の専門家会議に彼らを誘った。
<統一ロシア>党のピョートル・トルストイ下院副議長は、系列委員会に付属して設立される『インターネット分野の立法に関わるもう一つの専門家会議』への参加をブロガーたちに呼びかけた。同委員会はこの間、会議を開いて、インターネットにおいて<アノニマイザー(公式にブロックされている情報へのアプローチを提供しているサイト)>をブロッキングする法案その他について議論を重ねてきた。『これは、誰にも文句を言わせないように、誰かがどこかのねじを締めつけたがっている、ということではない』と同副議長は強調した。『ただ我々は、インターネット空間が法の観点からしてきれいで非の打ち所がないものとなることを、芸術や映画の発展をせき止め、その活動の採算を取れなくさせているに過ぎない著作権侵害の慣習がなくなることを、望んでいるだけなのである』と。
こうした専門家会議への参加を、ブロガーたちは拒否しなかった。エレーナ・リソフスカヤ(ユーチューブで車愛好家向けのブログ<リーサがハンドルを握る>を執筆)は、ロシアの自動車市場をどうやって文化的なものにするか、について自身のアイデアを議員たちに届けることができるのではないか、と期待する。
『どんなふうに機能していくか、興味津々だ』と、ユーチューブ<セルフィ>チャンネルのエゴール・ヤコブレフは言う。『ビデオブロガーたちの立場が具体的な法案の中に見えるような形で考慮されなければ、協同のアイデアは死滅するだけだ。システム内で緊張が増すだけになるだろう』
ポルタル<レンタッチ>では、ユーザーたちのスタンダードな質問に簡潔に答える形で、議員たちとの会談は次のように評価された。『政府がすでに<レンタッチ>を屈服させたかって? ノー。面白かったかって? 別に。何か議論したかって? 何も十分には』

議員たちが考えているほど簡単に彼らを取り込むことは難しそうですね。
そうした誘いをかける一方で、ロシア政府は通信アプリへの圧力を強めています。4月にはまず手始めに<ライン><ゼロ><Vチャット><ブラックベリー・メッセンジャー>など小規模なサービスを閉鎖、6月にはロシア国内で約600万人のユーザーがいるといわれる<テレグラム>に閉鎖を警告し、事業登録をドイツからロシアに切り替えさせました。表向きは通信サービスの法令順守徹底とされていますが、今や反政権デモはこうした通信アプリやSNSを通じて呼びかけられる時代、危機感は相当抱いているのでしょう。
余談ですが、通信アプリ<テレグラム>を発足させた(2013年8月)人物は、2006年に欧州最大級と言われるSNS<フコンタクテ>を立ち上げたサンクトペテルブルグ出身の弱冠32歳パーヴェル・デュロフです。2011年に反政権派の使用を封じようとした連邦保安局の要請を蹴って政権との関係を悪化させ、さらに2014年のウクライナ危機では同国活動家らの個人情報提供を求められてこれも拒否し、ロシアを去らざるを得なくなりました。
ドイツに拠点を移して、利用者情報の秘匿性が非常に高い通信アプリ<テレグラム>のサービスを始めました。しかし、これがまた、利用者情報保護を最重要視するその姿勢ゆえにロシア当局とぶつかり、ロシアに事業登録しなければ国内でのサービスを閉鎖すると警告されてしまいます。 最初は拒否していましたが、もろもろの圧力がかかって、結局6月末には登録変更を受諾しました。これで<テレグラム>は、当局の要請があれば、どんなに抵抗しても、ユーザーの個人情報の提供に応じざるを得なくなる事態も起こりうることになってしまったわけです。
しかしながら、将来への漠とした不安と閉塞感に包まれ、それでも自由を欲し、現政権への不満をふつふつと募らせている<新世代>、転んでもただでは起きないような気がしてなりません。


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