SSブログ

<ヴァルダイ>クラブ出席の某政治学者、ロシアの見方を代弁する

国際討論クラブ<ヴァルダイ>は、2004年にロシアのヴェリーキー・ノブゴロドで設立された専門家たちの分析センターで、今もなお定期的に開催されています。<ヴァルダイ>という名称は、最初の会議が<ヴァルダイ湖>の近くで開催されたことにちなむものです。
その第14回会議が10月にソチで開かれ、<世界の未来図>について様々な議論が闘わされました。そうしたテーマの一つ、今後の欧州の命運について、政府系ロシア新聞がドイツの政治学者アレクサンドル・ラールにインタビューしていました。ある意味、ロシアの見方を代弁しているような内容でしたので、ご紹介しておきます。

10月18日付新聞電子版(https://rg.ru/)に掲載されていたインタビュー記事です。

「ソチで開かれた第14回<ヴァルダイ>クラブの会議で議題となった世界の未来図について、そのテーマは欧州の運命についての議論にも刺激を与えた:500年に渡る<旧世界>の支配は終わったのか? あるいはそうした類の評価を欧州の地政学的敵対諸国が広める一方で、欧州自体は新ルネッサンスを生き抜いて現在の動乱から脱出し、より強くなっていくのだろうか? <ヴァルダイ>クラブの欧州メンバーの一人は「欧州を放り出すべきではない。欧州が<消滅の淵にある>という妄想はすべて、まったく現実に即していない」と主張する。
旧世界はどちらの方向に動いていくのか、地政学的消滅の方向へか、あるいは輝かしい未来の方向へか、このテーマについてロシア新聞の記者がドイツの政治学者アレクサンドル・ラールにインタビューした。
―<ヴァルダイ>クラブの会場に集った人たちの半分は、冷戦の塹壕に一度も籠ったことのない人たちだ。半分にはその経験がある。当時は二つの異なった真実が存在した。しかし、その後状況が変化し、最近の25年間で、世界には一つの文明的空間が、あふれるような一つの情報空間が形成されたという見方に、欧州は慣れきってしまっている。大西洋の向こうの見方に支配されてしまった。しかしながら、今日、すべてが再び変わった。一つの代わりに一度に三つの場裏が出現した。様々に異なる情報畑を持った西欧とユーロアジアと中国である。
西欧の情報畑を支配あるいは生み出しているのは、西欧の思想の正しさとその絶対的勝利を確信しているリベラルなイデオロギーを持った西欧の諸機関だ。しかし、西欧の行動の正しさを疑問視するユーロアジア場裏が勃興し、そこには別の真実と別の利害関係が生まれつつある。我々はこうした絶対的に異なる情報畑の存在とその対立に慣れる必要がある。それは<ヴァルダイ>クラブでも感じることができる。欧州に住んでいる人たちはロシアの新聞を読んでいないし、ロシア人の考え方も知らないし、興味も持っていない。彼らは実際、西欧はすべて順調で西欧を負かすことはできないと相変わらず確信しているのである。
現在の西欧のイデオロギー、政治、哲学、社会構造はルネッサンスに始まり、その後500年の間に形成されたものだ。欧州では、落日はまったく不可能だ、それは歴史の終わりを意味するから、と信じられているのである
―今日、世界政治における別種の新たな極によっても支持されているロシアの見方はこれとは異なる。世界は以前よりはるかに複雑になっており、西欧のリベラルなイデオロギーが大きく崩れ始めている、と言うのである。そのモデルを全世界に適用することはできない、そのモデルで様々な問題を解決することはできない、と。我々の目の前で二つの真実、二つの情報空間が衝突している。
冷戦の再来を警告する人々は正しいのではないか、と私には思える。これはもはや単なる一部の政治学者や<思想の中心となる人々>の個別の喧嘩ではないからだ。世界はどのように構築されるべきか、どういった新原則で構築されるべきかという模索が行われている。
西欧の問題は、自分たちの誤りを見ようとしない点にある。<ヴァルダイ>会議で発言した彼らの代表たちは、欧州の民族主義とポピュリズムはたやすく克服できる、なぜなら根っこがないからだ、と主張する。要するに、西欧の哲学者や政治学者たちは、いかなる他の選択肢も見ていない、原則的にそうした選択肢の存在を認めていない、そんなことに興味はない、だからこの25年間そうした選択肢の探求に関心を示してこなかったのである。
ロシアはこの点でもっと素直だ。ロシア自体が90年代に多くの面で西欧的視点を取り入れ、しかしその後自身のアイデンティティ、独自の見方を模索し始めたからだ。アジアや中国で奏でられている新しい<音楽>に、西欧よりもはるかによく耳を傾けている。そのおかげでロシアは、新しい多極的世界がどういう風に構築されていくだろうかという感触をより客観的につかむことができるのである。
―私は今のところ冷戦について語っている。熱い戦争でなくてありがたいところだ。その一方で、今日われわれは新兵器の実験を注視している。情報戦争を呼ぶサイバー兵器である。これは人々を分断し、引き離し、手を引くことが極めて難しい新たな敵の形象を作ってしまうがゆえに、極めて危険である。大きな戦争はそれでも起こらないだろうと私は思う。しかし、情報戦争も心理的に人々を苛烈にし、経済戦争を引き起こす。現に今、我々が目にしているのは、米国人たちがその経済的立場を利用して、米国に賛同しない者たちに制裁をかけ、その行動によって世界貿易の諸原則を破っている現実である。
―西欧の人々は、自分たちと違う見方に耳を貸すことを止めてしまった。彼らは、すべてロシアのせいだ、これはプロパガンダだと確信している。ロシアが持ち出す論拠もロシアの考え方もまともに取り合う必要はない、と。その結果、西欧はモスクワと仲直りすることはできるが、ただしその犯した過ちを認め、90年代のように振る舞うという条件付きだ、とする。そして、2007年ミュンヘン会議でのプーチン演説からこの10年間で議論されるべきであった主要問題を、ロシアと討議したいと西欧は思っていない。すなわち、欧州共通安全保障システムの欠陥についての議論である。
―世界秩序のシステム全体を西欧の二頭のクジラ、つまりNATOと欧州連合だけで構築すると想定することはすでに不可能だ。ロシアには何かしら二次的な地位が求められた。最良の場合でも欧州連合の一連合メンバーか、ロシア・NATO会議の枠内でNATO加盟諸国との円卓会議に一席を与えられるかであったが、何も決められなかった。いつも西欧の視点が説明され、それに対抗する論拠に耳を貸そうとしない。しかし、それでは安全な欧州は構築できない。私が非常に残念に思い、がっかりしているのは、ドイツでも欧州でも、欧州大陸にあって最大の国ロシアが他の欧州諸国と同様の安全保障を有することができるように、安全保障の現行システムをいかに修正するかについて、オープンで客観的な議論を始めることができないでいることだ。
―欧州人たちは米国の言うことだけを聞いている。確かに、米国にトランプ大統領が登場し、米国のエリートたちがアメリカ・ファースト、米国の利益を一番に考える政策を取るべきだと明確に発言していることで、状況はややこしくなってきている。米国では今、米国の偉大さに利益をもたらさないという理由で、欧州人たちはそれほど関心を呼ばない隷属者扱いされている。当然ながら、欧州人たちはそうした状態に甘んじたくはない
しかしながら、欧州には世界人口のわずか7%しか住んでいないのである。いくらハイテク技術を持っていても、高度に発展した独自の政治文化と経済を有していても、欧州の人口は減少し続けている。もちろん、欧州はすでに10年も前に中国を少し恐れ、中国が新たな大国となるのは避けがたいと理解していた。だからこそ欧州連合は今、ほぼ自由な経済ゾーンを中国と築き、経済面で欧州が孤立しているように見せまいと努めているのだ。
―これは、もちろんパラドックスである。欧州はこれまでいつも、自分たちがパートナーシップを結ぶのはリベラルな価値観を分かち合う国々とだけである、と言ってきたからだ。そうした国々とは親しく協力する用意があり、そうでない国々とは距離を置く、と。
はたして、欧州は共通の価値観について中国と話をつけることができるのだろうか? もちろん、できない。中国には中国独自の立場があるからだ。中国は欧州に圧力をかけてくるだろう。中国が欧州の経済や金融、欧州の経済的存在そのものの活動力に及ぼす影響は、欧州人たちの想像をはるかに超えるものとなるだろう。
―欧州は一極世界の方向を向いている。様々な安全保障問題で米国の方向を向いている。多極を認めていない。大西洋を越えたブロックが、欧州人の視点からすれば、グローバルな分野で唯一の軍事組織として今後もあり続けるべきなのである。それゆえに、ユーロアジアの領域に、例えば上海協力機構をベースとしたような代わりのブロックを創らせまいとしているのだ。
―ロシアが、90年代に予想されたように、たやすく西欧世界に溶け込むことができると考えるのはナイーブだと私は思う。仮面がすべてはがされ、幻想が消えた今、もっとも大事なのは、民主主義的なレベルで再び対話を始めるというフェーズに入っていくことだ。西側が今日よくやっているような、自分たちとは違った視点を、聞いても意味のないプロパガンダ呼ばわりして認めることを拒否するようなやり方ではない。
変化は起こるに違いない。私は二つの潮流を感じる。それでも私には、ドイツやフランスや英国といった外交スクールが極めて強く、世界政治がはるかに客観的な受け止め方をされている国々では、西欧にもロシアにも存在している利害について再び対話を始める必要があることが理解され始めているように思われるのである。
残念ながら、欧州には、特に自分たちはいわゆるロシアの攻撃を常に受けてきた犠牲者という見方がイデオロギー化している東欧諸国には、他の外交スクールが存在している。彼らは残りの欧州を、こうした恐怖とロシア嫌いに感染させた。これらの国々で、せめてエリートの一部はロシアと建設的で実り豊かな対話を行うことに関心を抱けるように、ロシア嫌いの傾向を打ち砕くことは極めて難しく、長い時間を要するだろう。残念ながら欧州も同様で、欧州連合の新米加盟国たちに、対ロ政策を見直すべきだと説得する様子は今のところ見受けられない。
結局、欧州はますます多くのカネをいわゆるロシアのプロパガンダとの闘いに費やしており、新しい組織の創設に大金を注ぎ込んで、そうした資金を、私には非常に必要だと思われるモスクワとの建設的な対話の復活に割り当てることを拒んでいる。
―我々はかなり大きなカオスの世界に生きている。すべてが同志的に、対話を通じて、相互理解を通して起きるわけではなく、むしろ往々にしてその反対だ。当然、ロシアと中国を言い争わせようとする大々的な試みが取られるだろうし、西欧の様々な<思想センター>がそうした試みに取り組むだろう。
ロシアも欧州に同盟国を探そうとするだろう。欧州連合首脳部と直接話をすることは不可能だからだ。ロシアは対話に関心のある政治勢力とのコンタクトを模索するだろう。米国は、ロシアと中国とイランと北朝鮮をどこかで抑え込みつつ、また中東を新たな形で建て直そうとして、その権威を保とうとするだろうが、米国にはその力はもはやないと思う。人々はこの25年間でこうした状況に慣れてしまった。以前の秩序はもう戻らないだろう。
―私がもう一つ、大いに驚いているのは、<思想工場>で働いている現世代の政治学者たち、世界秩序について新しい思想や考え方や解説を日々まき散らしているジャーナリストたちが、広島と長崎で起きたことを全く理解していないように見えることだ。米国が原爆を投下した後に、彼らの意見によれば、西欧世界に民主主義が樹立されたのである。したがって、原爆投下は、事実上の日本壊滅であったが、欧州では人道的悲劇とは見なされていない。
それゆえに、原子力兵器を使用したことが、日本自体や米国その他の国々では、西欧世界の原則と価値観の夜明けの始まりとどこかで相関してしまっているのである。つまり、彼らにとって広島は、リベラルな西欧思想が形成された出発点なのである。原子力兵器を使用することが一体何を意味するか、もはや人々は理解していない。欧州人の頭の中に、リベラルなシステムは力で守る必要があると確信する軍国主義のある一定のモメントが登場した。多極世界にあって、米国および西欧諸国の一部が取り組んでいるそうした兵器のガチャガチャした音によって、過去に事実上西欧の植民地国だった諸国がますます大量破壊兵器を手に入れようと走り始めるだろう。
―これを止めることは可能だと私は思う。しかし、もし北朝鮮が実際に<原子力兵器大国クラブ>入りすれば、最低でもさらに五つの国がこの恐ろしい兵器を手に入れるだろう。軍拡に歯止めがかけられるのは、主要な核兵器所有国自身が核武装を解き始め、自分たちが先例を示すことで、若いクラブのメンバー国たちに核兵器に対して何らかの猶予期間を置くことを認めさせる時だけだとは、常に言われていることである。軍拡を止める手立ては他にはない。」


nice!(0)  コメント(0) 

ロシア国債購入者の約3分の1が外国人でルーブルを支えている?

欧米の経済制裁を受けて、本当のところではロシア経済はもうヨレヨレなのでしょうが、中央銀行が政策金利を高く維持し続けていて、世界の投資家たちがロシア国債を買ってくれていることで通貨ルーブルの相場がかろうじて支えられている、というのが実情みたいです。
今後欧米の金利が引き上げられて、新興諸国から資金が引き上げられ始めたら、新興諸国の経済は崩壊するかもしれない、と懸念されていますが、ロシアも例外ではなさそうに見えます。

10月14日付のガゼータRU紙電子版(https://www.gazeta.ru/)が書いていました。

「連邦国債市場で非居住者の割合が記録的な31,6%に達した。名目金額で2兆ルーブル、現レートで350億ドルの国債を非居住者が持っている。国外からロシア連邦国債市場に資金が流入してくる流れが安定性を支えている、とアナリストたちは言う。外国人たちが連邦国債市場から一斉に引き揚げ始めたら、我が国の通貨は崩壊してしまうかもしれないとも指摘する。
ロシア連邦国債の名目金額に占める非居住者の割合は、2012年1月1日に同データが発表され始めて以来、記録的な水準となった。ロシア銀行のデータによると、今年9月1日現在で31,6%、金額にして2兆320億ルーブル、すなわち約350億ルーブルにも達している。ロシア銀行がこの12日に発表した国債評価額で判断するに、非居住者の割合は9月のデータからしても増えるに違いない。2017年10月1日現在でルーブル建て国債への投資額は374億2900万ドルだったからである。
2017年1月1日時点で外国人たちによるロシア国債への投資総額は250億3200万ドルだったので、今年1月から9月までの期間に、彼らは120億ドル以上の国債を購入したことになる。今年第三四半期だけで、ロシア国債への投資はほぼ60億ドル近く増えたわけだ。2016年1月1日に比して今回の伸びは、総額147億3600万ドル以上のルーブル建て国債を外国人たちが購入したおかげである、という印象が強い。
『国家諸機関の対外債務が米国ドルで125億ドル増えた原因は、主として、非居住者たちがロシア・ルーブル建ての様々な国家債権を二次市場で購入したことにある』と中央銀行は対外債務を評価してコメントした。
その他のセクターの債務は129億ドル、すなわち3,8%増え、これはかなりの程度、国外の連携組織から貸し付けがあったからだとされた。銀行部門の対外債務は縮小傾向が続いており、2017年1月から9月期の総括で120億ドルとなった。
『2017年10月1日現在でロシア連邦対外債務を分野別にみると、国家諸機関の債務割合が9,6%、銀行部門が20,0%、その他の部門が66,3%となっている』と中央銀行は報告している。
外国投資家たちはロシア連邦国債への投資を続けており、それは他国の国債に比べてロシア国債の金利が数倍も高いからだ。これがロシアへの外貨流入を可能にしており、ルーブル通貨の安定を支えている。グランドキャピタルの分析部部長セルゲイ・コズロフスキーは、短期的にはルーブルは『キャリートレードでのロシア国債の需要で支えられるだろう』と見ている。Sberbank CIBのアナリストたちも、ロシア国債市場はすでに6週間続きで投資の流入において他の新興市場をリードしている、と指摘する。
ロシアを対象とした諸々の基金が、1億6200万ドル、つまり管理下にある資金の1,5%を投資して、投資の基本的流入を確実なものにした。その他の投資家たち大多数の動きもポジティブだった。ロシアはブリックスト、つまりブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ共和国・トルコ諸国の中で比較すれば、明らかにリーダー格であることが判り、第2番目の位置を占めたのがインド(1億4800万ドル、0,11%)である。このグループの中でトルコだけが30万ドルの純資金流出を記録した。
アナリストたちは、もし外国人たちがロシア国債から一斉に手を引き始めることを決めたら、キャリートレードは一転してロシアにとって問題となるかもしれない、と警告する。その要因の一つとして、ロシア連邦の政策金利と特に米国を中心とした先進諸国の金利の開きが縮小することが挙げられる、と<アロール ブローカー>のアナリスト、キリール・ヤコヴェンコは指摘する。中央銀行は一貫して政策金利を低く抑えており、ライセンスのリコールにより減少している貨幣総量を何とか押さえつけないように努力している。その反対に米国FRBは強いドルを標榜し、その金利を引き上げるだろう。『かくしてキャリートレードを駆使して稼ぐ余地は縮小され、ほどなくキャリートレーダーたちはロシア国債から資金を引き揚げはじめ、ドル相場の上昇を呼びうる通貨に移し始めるかもしれない』とヤコヴェンコ氏は言う。
外国人投資家たちがロシア国債を活発に売りさばき始めたら、通貨ルーブルへの圧力はさらに増すだろう、と<ツエーリッフ キャピタル マネージメント>のオレグ・ヤクーシェフもこうした見方に同意する。
『米国の我が国に対する経済制裁の拡大が、その大元となるかもしれない。その場合にはロシア国債の購入がそれほど魅力のない金融オペになってしまうだろう』と見ている。ヤクーシェフ氏は、全体として第四四半期にはルーブル相場の動きは様々なファクターの影響を受け、その多くはロシア政権がコントロールしにくいものになるだろう、と強調する。
ロシア中央銀行と財務省は、外貨の需要が急激に増した場合には、準備金の外貨を売ってルーブル相場の動きに影響を与えることができる。『もっとも我々としては、外貨の需要が扇動的なレベルにまで増大することはほぼあり得ないだろうと推測している』とクーシェフ氏は結論付けた。
2017年8月1日時点の外貨準備高は1兆8960億ルーブル(30,2%)で、今年4月1日にこの30%レベルに初めて達し、その時から一度もそれ以下には落ちていない。」

意外と楽観的ですね。

nice!(1)  コメント(0) 

ブームは去った? ロシア企業による外国人エキスパートの招聘 

ロシアの企業も、かつて経済が上向きな時には、高額報酬を支払ってその業界のエキスパートたちを外国から招いていました。2014年のクリミア併合で欧米の経済制裁を受けるようになってから、このブームは徐々にしぼんできているようです。
専門知識と技術で世界を渡り歩くエキスパートたちによる各国の評価(HSBCホールディングスPlc.)を交えながら、10月7日付ガゼータRU紙電子版(https://www.gazeta.ru/)が次のように書いていました。

「ロシア企業は外国人エキスパートたちに失望している。ロシア人より彼らを雇うことでそれほどいい結果が得られるわけでもなく、ルーブル下落後はその経費が跳ねあがっているからだ。2014年以降、エキスパートへの需要は六分の一に減った。我が国の企業がかつてのように外国人に月1万ドル払う用意があるのは、ロシア人のスペシャリストをみつけること難しいといった切羽詰まった場合に限られている。もっとも、外国人たち自身も、生活レベルは全体としてそれほど高くないと見て、別に急いでロシアに行こうとしているわけではない。
2014年以降、外国からスペシャリストを招く企業の数は30%から5%にまで減少した、と人材会社<ユニット>はガゼータRUの取材に対して語った。外国のスペシャリストたちを招くブームは去った。リクルーターたちは、ロシア企業のエキスパートたちへの関心は薄くなった、と確信している。
『 まだ10年前までは、ロシア企業は多額の給与とボーナスを約束してエキスパートたちをトップのポストに招いていました。今、我々の見るところ、大多数の雇い主が人を雇う時にプラグマチックなアプローチを取っています。社員に投資した1ルーブルは2倍、あるいは、あわよくば3倍の利益をもたらすべきもの、と考えているのです』と<スーパージョブru>社はコメントした。もしエキスパートたちがそうした結果を出すのであれば、大企業は彼らを電車に乗せてでも飛行機に乗せてでも国外から連れてくるだろう、と付け加えた。
<ユニオン>が指摘するように、ロシアでは2014年に外国人エキスパートに対する需要が激減した。ルーブル下落後、企業の一部は<高報酬>の幹部候補者らを国外から引っ張ってこなくなった。外国人への給与はまずドルかユーロで支払われ、一部企業はロシアの現実という条件下での彼らの有効性に幻滅もしたからである。人材会社が言うには、彼ら外国人エキスパートたちにロシア企業が支払う平均給与額は月額7000ドルから1万ドルである。
ロシア企業は現在、ロシア人のスペシャリストを見つけられないというもっとも差し迫った状況に限り、外国人を雇用している。基本的には細分化された専門系列分野においてであり、たとえば生産部門の技術専門家や工場長クラスの人材で、彼らは他の国々の設備や仕事の特徴をよく知っているからだ。また、企業側がロシアに類似品の存在していない新製品を発売したいと考えている時に、外国人エキスパートを雇ったりしている、と<ユニット>のルスタム・バルノホドジャエフ顧客担当部長はいう。
ロシアで外国人エキスパートたちがまだスペシャリストとして求められる分野は、イノベーションやハイテク機器、通信、冶金工業、化学産業、薬理学関連の分野だけである。
外国人たちも、クリミア併合後はロシアで働く意欲を失ったことも、指摘しておくべきだろう。我が国に来て働く可能性のあった人たちの一部は、2014年後には政治的リスクを考えるようになって来なくなった、と<ユニット>社は指摘する。HSBCホールディングスPlc.による各国のエキスパートたちにとって魅力的な国のランキングによると、ロシアは32位である。
外国人エキスパートたちの意見によると、ロシアでは職に就くのが比較的難しくなく、キャリアの階段も速く昇ることができて、報酬も高い、という。例えば、<実質所得>レベルで我が国は同上のランキングで7位につけている。HSBCによれば、外国人はロシアで年平均およそ9万9000ドルの給与を得ており、母国より25%ほど多く稼いでいる。それに、ロシアでは活発な社会生活を営むことができ、新たな友人たちを得ることが可能だ、と外国人たちは見ている。この両者の数値で、我が国はランキング7位のポジションにつけているのである。
しかしながら、全体としてはロシアの生活水準は極めて低い、と評価されている。この数値では、ロシアは38位である。医療レベルでは38位、私有財産保護では36位に甘んじている。全体として、評価の対象となっているすべての数値(経済的将来性、家族生活を営み、新たな経験を得る可能性を含む)を総括すれば、外国人たちにとって最も住みやすいのはシンガポール、ノルウェー、ドイツとなる。
外国人が居住民の60%以上を占める都市国家シンガポールは、家族生活を送るのに素晴らしい場所だと見なされている。HSBCの幸せな家族生活の特徴を示す数値群のランキングでは、シンガポールは世界第3位の位置にある。ちなみに、シンガポールの他に、オランダ、スウェーデン、ノルウェー、ドイツがベスト5に入っている。
シンガポールは生活レベルと寛容度のレベルで6位、社会生活の活発度で12位、学校教育水準で2位を占めている。シンガポールはよくあるアジアの都市ではない。スラム街はなく、便利な交通網が存在し、散歩する場所が多くあり、汚職はほとんどないと言っていい。この都市国家の住民たちはみな驚くほど礼儀正しく、誰も紙切れを投げ捨てたりガムをくちゃくちゃ噛んだりはしない。多額の罰金を課せられるからだ。シンガポールは、他の国ではもっと稼げるかもしれないが、ここに来たいと望む人たちの意欲を冷ますことはないと強く思わせるのである。確かに、仕事を探すことの困難さと納税後の実質所得レベルでは、シンガポールはHSBCランキングの13位である。
外国人エキスパートたちが、どこよりも自分にとって経済的可能性があると評価しているのがスウェーデンであることは興味深い。年平均給与額が19万3000ドルのこの国を、経済状況を特徴づける数値グループのランキング第1位とした。外国人たちは、ビジネス上の秘密が守られること、キャリアの階段を上る速さ、高い所得水準を評価している。
しかしながら、お金だけに幸せがあるわけではない。スウェーデンは移住魅力度の総合ランキングでは11位なのである。高い給与も、社会的交流や私生活の面でこの国で直面する難しさを補うことはできないようだ。外国人が地元の生活に溶け込む可能性についてのランキングでは41位であり、オープンな関係を築く可能性では46位なのである。」

これは専門知識や専門技術や様々なノウハウを武器に世界を渡り歩くグローバルな人材に関する話でしょう。
一方では、ロシアのサンクトペテルブルグで開催されるサッカー・ワールドカップW杯(2018年)のスタジアム建設に約110人の北朝鮮労働者が不透明な形で関与し、死者も発生していた実態が明るみに出た、という悲惨なニュースも入ってきています。
10月11日付産経新聞によりますと、同市政府高官がスタジアム建設を請け負っている建設会社を集めて工事の遅れを叱責し、「資金協力するか、労働者を提供するか」と迫ったのだそうです。断れば公共工事を受注できなくなるのではないかと恐れて、建設会社の一部が北朝鮮労働者の提供を申し出て、彼らは2016年9月から12月にかけて建設現場で働きました。 サンクトペテルブルグには北朝鮮を専門に扱う建設会社が10社以上あるそうで、彼らは「1日12時間から14時間、一日10ドル(約100円、他国からの労働者の三分の一)の給与、集団で生活させられ、移動の自由も休日もない」という人権無視の過酷な労働条件化で働かされているとも報告されています。受注額の多くは北朝鮮政府に納入されているそうです。
そういえば、日本でも、新国立劇場の地盤改良工事で施工管理をしていた23歳の新入社員の男性が今年3月に過労自殺したという、痛ましい事件がありましたよね。

21世紀の世界に広がるこのひずみ、この格差、この飽くなき強欲さ、暗澹とせざるを得ません。



nice!(0)  コメント(0) 

ロシアにも存在する様々な男女格差について

男女の給与格差、政治・経済・社会方面の活動で女性が受けている根強い制約についての認識と議論において、日本が世界に大きく後れを取っていることは、2016年10月31日に更新された世界経済フォーラムの<世界の男女格差指数ランキング>111位というデータからもわかりますが、ソ連時代には男女平等が謳われていたロシアもなんと75位でした。
給与の面でも、男女のクオータ制導入の面でも、現代ロシアには明確な格差が存在しているようです。

9月14日付ガゼータRU電子版(https://www.gazeta.ru/)に載っていた記事です。

「ロシアでは女性の給与が男性よりも26%低い。ロシア女性は月平均2万8000ルーブル(6万円弱)しか稼いでいない。しかも、女性の26%は男性よりも教育水準が高いのである。女性の37%は高等教育を受けているが、男性でこの比率は31%だ。政権もこうした差別があるという問題は認めているが、状況改善の具体的な手段はなかなか取ろうとはしていない。
ロシア女性の給与は男性よりも26%ほど低く、これは他国の数字と比較してもロシアにとって不面目な数字である。2015年のロシア連邦の男性の平均給与は3万8600ルーブルだったが、女性の平均給与は2万8000ルーブルだったと、2017年から2022年までの女性のための国家行動戦略を実現するロシア政府付属の調整会議で、オリガ・ゴロデッツ副首相は述べた。女性の方が男性よりもはるかに高い教育を受けているのに・・・と、ゴロデッツ副首相は付け加えた。
『数字からわかるように、差別は確実に存在しています。実際のところ、世界の誰しもがロシアの女性の教育水準がユニークにも高いことは認めており、実に女性の37%が高等教育を受けているのです。それに比べて男性が高等教育を受けている比率はたったの29%です。しかしながら、女性の給与水準は男性の平均給与の73%に過ぎないのです』とゴロデッツ副首相は述べた。
彼女の言葉によると、男性と女性の給与差が最も小さいのは教育分野においてである。修士号取得者の41%が女性で、博士号取得者の25%が女性だからだ。
今年3月に<2017年から2022年までの女性のための行動国家戦略>が採択された。 同文書では、<女性が社会生活の政治、経済、社会・文化分野に平等かつ全面的に参加できる条件を作ること>が優先的方向であると記されている。特に2022年までに政権の立法諸機関における女性の割合を30%にまで上げることが盛り込まれている。ゴロデッツ副首相の言葉によると、国会に占める女性議員数においてロシアは世界で100番目の地位に甘んじており、英国・ドイツ・アゼルバイジャン・キルギス・タジキスタンといった国々に遅れを取っている、という。
『下院で女性議員が占める割合は15%、上院では17%です。女性閣僚の割合は10%だとも付け加えておきましょう。31人の閣僚の内たった3人です。この数字では、ロシア連邦は英国やオランダやドイツといった西側の先進国のみならず、例えばアゼルバイジャンやタジキスタン、キルギスその他といった発展途上国にも先行されています』と同副首相は報告した
今日、全世界の国会に占める女性議員の割合は19,6%で、スカンジナヴィア諸国が42%と最も高い水準にある。『これらの国々は生活レベルが最も高く、教育・保健・社会保障においても素晴らしいシステムをもっていることを指摘しておきたいと思います』とゴロデッツ副首相は述べた。
ロシアでは政治システムにおける男性と女性のクオータ制の実現は遅々として進んでいない、と労働省の戦略文書には記してある。実際、そうした方向での変化はどうやら促進されそうにはないようである。例えば先週、経済発展省のマクシム・オレーシキン大臣は、政権機関において女性と男性の人為的なクオータ制を導入することには反対すると述べた。『一方では、男子と女性が混在すれば最適な結果をもたらしてくれる、という視点は支持する。しかし、その一方で、人為的な割り当てには反対だ。実際には様々な分野があるからだである』と発言したのである。
多くの国々では、クオータ制は標準規定として実施されている、と言っておく必要があるだろう。例えば、ヨルダンの国会では女性議員は10%、ケニアでは30%とすでに割り当てられている。エジプトの国会は10%で、現地の国家機関で働く女性の割合は25%と規定されている。ニジェルは国会の女性のクオータを15%にまで、スーダンは30%にまで引き上げた。チュニジアは男女の比率50対50のクオータ制を導入している、と世銀の報告書には記されている。
全体として民間セクターを含めて指導的地位における男女の不平等は依然として存在する、とロシアの戦略文書では指摘されており、雇用主の67%は男性である。
『これには多くの要因が関係しているだろう。例えば、女性の労働時間は男性よりも短く、給与水準が低い分野で働いている。女性が主に教育や保健の分野で働いているとすれば、男性は採取や金融の分野で働いており、女性の方の給料が低くなってしまうのである』と経済大学労働研究センターのウラジーミル・ギムペリソン所長は解説する。
女性の社会的・経済的活動量は男性よりもまだ低いままにとどまっているが、これは必ずしも女性たち自身が選択したわけではない。例えば、産休を取ると、その失われた時間ゆえに、女性が出世する可能性は15%から20%は減る、とかつて労働及び社会保護省のマクシム・トピーリン大臣は語っていた。同大臣の言葉によると、若い母親たちが少しでも早く完全な形で職場に復帰できる条件を作る必要がある、という。彼女たちはまだしばしばその半分ぐらいしか働けていない。
『母親たちが必要な時に、仕事に出られるときに、仕事に出たいときに、就学前児童施設を利用することができたならば、貧困率は低くなるだろう。明らかに収入が増えるからだ』とトピーリン大臣は指摘した。統計によるとロシアの貧困家庭の60%は子供のいる家庭である、とも付け加えた。
『きわめて多くの母親たちが、特にまだ子供が小さい間はパートで働いている』と社会・政治モニタリングセンターのアンドレイ・ポキーダ所長は言う。同所長の言葉によると、男性と女性が同じ部門で働いている場合は、給与はおそらくほぼ同じだろう、という。『しかし、地位が高くなるにつれて女性の数は少なくなり、これが両性の平均賃金にも影響を及ぼしているのである』と述べた。
国際労働機関のデータによると、いくつかの国では男女の給与格差が40%にまで達している。先進諸国の特徴としては、地位が上がるにつれて給与格差が大きくなるというパラドックスがある。つまり、平均して欧州での男女間の給与格差は20%だが、トップマネージャーの間ではこの格差は40%から50%にまで広がっているのである」

日本の実情と大差ありません。
ロシアと日本は男性中心主義の社会的メンタリティではなんだかよく似ていますね。
家事に育児に子供の教育、親の介護、最低限必要な地域活動など、経済的な<効率性>だけでは測りきれない、しかしながら、人が生きていくうえで基盤となるような重要な部分は、いまだに女性の肩に重くのしかかっています。私はジェンダー論者ではないので、男女が本質的に持っている性差を考えれば、その<いたしかたなく非効率な価値>と<経済的な効率性の価値>が対等に認識・評価される社会が、真に男女平等の社会だと思っています。男性中心主義の社会構造ではそうした認識の浸透がどうしても遅く、女性の価値観をしっかり反映させるためには、女性たちの政治・社会への進出はとても重要だと考える者の一人です。



nice!(1)  コメント(0) 

プーチン陣営、大統領選挙戦モードに入る

何事も起こらなければ、四期目の大統領就任が確実視されているウラジーミル・プーチン現大統領の陣営が、来年3月に予定されている大統領選に向けてそろそろと動き出したようです。その公約スタイルは、なんだか、日本の衆議院選挙での与党側のそれと似てきたような気がします。プーチン大統領はかつて、自民党による長期政権維持の日本型統治スタイルを参考にしたいと語っていたことがありますが・・・。
 それとも、どんな国(一応民主主義国の)でも、長期政権になると、政権維持を目指すスタイルというものがどことなく似通ってくるものなのでしょうか。

9月10日付ガゼータ紙電子版(https://www.gazeta.ru/)の記事です

「ウラジーミル・プーチンが第四期目を目指す大統領選で提示する可能性がある改革パッケージの準備がすでに進められている。保健や教育、汚職との闘いなど、有権者の心をそそる多くの分野が含まれている。ガゼータRUの取材によると、様々な官庁とクレムリンに近い諸機関が具体的な提案の作成を進めているようだ。
クレムリンに近い情報筋は、ガゼータRUの取材に対し、来年3月に迫った大統領選に向けたプーチン陣営の基本的なテーマについて語った。国民の健康について、所得アップについて、教育の発展について、汚職との闘いについて、ロシア国民の自由と新たな可能性について等になるだろう、という。
同情報源の言葉によると、こうしたテーマは一連の社会的世論調査を基に選ばれた。以前であれば、大統領選の主要テーマについては、クレムリンに近い市民社会発展基金<プーチン多数派>の報告書の執筆者たちが論じていた。彼らは今回、ギャロップ・インターナショナルのロシアおよびCIS特別代表部<ロミール>の調査結果を出発点とした。
もう一人のクレムリンに近い情報筋は、ロシア政権首脳部と協力関係にある諸官庁と諸機関が、様々な分野における改革パッケージをすでに準備している、という。プーチン大統領は今のところまだ大統領選への出馬を表明していないが、その周辺で出馬を疑う者の数は少ない。彼らのまとめた改革パッケージを選挙戦で提示する可能性もある。経済改革に関する作業は大統領補佐官のアンドレイ・ベロウーソフが調整しているというが、このテーマに関しては、元財相のアレクセイ・クドリンとビジネス・オンブズマンのボリス・チトフがすでに独自の提案を行っている。
経済改革の他に、社会経済政策と司法制度改革についての提案もある、という。司法制度改革については、最高裁判所の専門家たちが作成しているが、こうした方向での作業は、クドリンが指揮する<戦略構想センター>でも行われている。
ガゼータRUの取材によると、選挙戦向けの改革パッケージは各国家部局にも及んでおり、大統領府内でその作業が進められている。政権内では政党改革と地方自治体知事選出過程を改革する可能性もすでに論議されているが、こうした意向が反映されるのは、おそらく2018年3月の大統領選が終わってからになるだろう。政治改革に関する一連の提案も集められているが、プーチン大統領の選挙公約に掲げられるかどうかは、まだ不明だという。
プーチンはこれまでにも選挙には様々な社会分野での改革パッケージを準備して臨んできた。例えば、2012年の大統領選前には、ロシア国内のいくつかの主要マスコミに、ウラジーミル・プーチンの署名で自身の未来観を説明した綱領的な論文が掲載された。ロシア連邦の外交、民族問題、経済、民主主義の質、社会的正義、国家安全保障などに触れていた。選挙に勝利した暁には、すでに職務として、プーチン大統領は2020年までのロシア社会の様々な分野の発展を規定する11の大統領令に署名したのだった。
一方ドミートリー・メドベージェフ首相も、2008年2月の首相選出に当たって、様々な分野の大きな飛躍を約束した大声明を行っている。『不自由より自由の方がいい』と、彼の基本的なスローガンの一つは唱えた。その時メドベージェフは、個人的な自由、経済的な自由、自己表現の自由を念頭においている、と具体的に述べていた。
ウラジーミル・プーチンが闘った大統領選でもっともいい結果を出したのは2004年の大統領選である。4950万票を獲得した。2012年の得票数は4560万票だった。2004年も2008年もプーチンは有権者71.3%の票を獲得している。
ガゼータRUの取材によると、内政ブロックの現在の元締めであるセルゲイ・キリエンコは、昨年10月のその仕事始めとして新たな課題を掲げた:2018年、パーセンテージにおいても絶対的な得票数においても、政権側からの候補者にとってこれまでで最高の結果を出すこと。
クレムリンは、来たる大統領選挙の基本テーマとして、<ロシアにとっての未来像>を選択した。クレムリンの抱く多くの施策は、まさにこうした問題意識に根ざしている。かくして、モスクワで10月に開かれる若者と学生の全世界大会では、参加者たちは様々な分野におけるロシアと全世界の未来のテーマについて考えることになるだろう。プーチン大統領が列席した9月1日の全ロの新学期も、そのテーマは<未来を志向するロシア>であった。
政治学者のヴャチェスラフ・スミルノフは、プーチンは大統領選挙戦で有権者たちにそう約束せざるを得ないのだ、と見ている。当然、誰もがより良い暮らしを望んでいるし、候補者の誰一人として国民のこうした自然な期待感を無視することはできない。『今、実際に普通の人たちが望んでいること、それは公平さだ。もっとも、彼らはそれを単純に<今は暮らしにくいとしても、みんなもそうに違いない>と解釈しているのであるが・・・』とスミルノフ氏は言う。さらに同氏は、今、大統領に期待されていることは、その贅沢な生活スタイルをこれ見よがしに見せつけている官僚たちを<権威でもって枠にはめ込む>ことだ、と付け加えた。一方、政治エリートたちを仰天させないようにバランスを取る必要もある、としている。」

一方、政敵にも警戒心を緩めていません。プーチン大統領の65歳の誕生日である10月7日にサンクトペテルブルグで集会を予定していたアレクセイ・ナヴァルヌィは、いつもながら「無許可集会を呼びかけた」ということで2日に逮捕され、20日間の禁固刑を受けました。こういうところは、やはり、他の民主主義国とは違いますね。
それでも、10月7日当日は同氏の逮捕に抗議する数千人規模の集会やデモが開かれ、全国でおよそ300人の逮捕者が出たと報じられています。



nice!(0)  コメント(0) 

極東に国際的なハブ空港を、専門家たちは疑問視

これもロシア極東の発展に活路を見出そうとするプーチン政権の意気込みの現れなのでしょうか。極東地域の空港を改築・整備して国際的なハブ空港に変貌させたいと、日本を含めた外資の参入も見込んで、盛んにアピールしているようです。
9月上旬にウラジオストクで開かれた<極東経済フォーラム>でも大きなテーマとなったようで、9月9日付ガゼータRU紙電子版(https://www.gazeta.ru/)が書いていました。

「ロシア政府は極東の空港を積極的に発展させるつもりだ。ハバロフスクで進められているように、外国投資家の参入も見込んでいる。極東発展省は、この地域には国際水準のハブ空港を造る少なくとも五つの用地がある、と見ている。一方、専門家たちはこのアイデアには懐疑的だ。その地政学的位置や少ない人口ゆえに、こうしたプロジェクトの経済的合目的性は疑問視される、と指摘している。
今週開かれた<極東経済フォーラム>の枠内で、極東地域の空港インフラを発展させるいくつかの合意が結ばれた。韓国の仁川空港は、サハリン島に空港経済を発達させ、コルサコフ地区のプシスティ空港をベースにパイロット養成センターを創設する合意を、サハリン州政府と結んだ。外国経済銀行と極東およびバイカル地域発展基金は、ハバロフスク空港内に新たな国内線乗客用ターミナルを建設することで、<ハバロフスク空港>と合意した。
<2010年から2020年にかけてのロシア輸送システム発展計画>に盛り込まれている予測によると、極東に住む住民たちの輸送機関による可動性は、2020年までに2012年レベルの1,5倍になるという。これまでにプーチン大統領は、2017年末までに同国家計画に極東の空港再建に関する施策を特に盛り込んだ<極東の部>を明記するように命じていた。同計画が見込む2017年から2020年にかけての極東連邦管区一帯への融資総額は5422億ルーブル(約1兆円強)で、そのうち連邦予算として2156億ルーブルが組み込まれている。極東発展省の話によると、7月21日に<極東の部>のプロジェクト案が交通省に送られた。交通手段の乏しい遠隔地にある町やロシア連邦主体の七つの行政中心地で37の空港を整備する提案が含まれている、という。
5月にはメドベージェフ首相も、沿海州地方に農産物の輸送に特化した輸出入のハブ空港を造ることを提案している。この地方は中国と国境を接し、韓国や日本とも近いからだ。
『ロジスティクス・インフラを発展させるために、沿海州地方に農産物を専門に扱い、できれば加工設備も備えた輸出入ハブ空港を造ることをしたい』と5月30日、戦略的発展と優先プロジェクトに関する大統領府諮問会議の幹部会で発言した。
『ユニークなハブ空港が造れるのではないかと期待している。多くの流れをこちら側に引き寄せられるだろう。アジア市場を支配できるようになるかもしれない。つまり、国産の農産物を加工するだけではなく、隣国から原材料を買い付けることができるようになるかもしれない、ということだ』と、アレクサンドル・トカチェフ農業相は9月6日、タス通信とのインタビューで述べた。
同相の言葉によると、このプロジェクトに韓国の投資家たちが関心を示しているという。極東発展省の話では、この課題は検討段階にあるようだ。
現在、<ハバロフスク>国際空港の改築工事が行われている。昨年の乗客数は186万9000人を超えた。国際線は26万6500万人が利用した。同空港の改築は連邦特別計画として82億ルーブルの予算をかけて行われている。2019年には終わる予定だ。今年秋には新しく国内線のターミナル建設工事が始まる。外国からの投資も含め、約45億ルーブルの個人投資で実現される予定である。
9月6日の国家諮問会議で、マクシム・ソコロフ運輸大臣は日本の大企業のコンソーシアムがこのプロジェクトに関心を持っていると語った。ガゼータRUが<КОМАКСе>に確認したところ、日本の大手総合商社の双日株式会社(日本側からの融資をまとめている)、ジャパン・エアポート・ターミナル、海外交通・都市開発事業支援機構JOINがその中に入っているという。現在、ビジネス上の契約条件の調整と、日本のコンソーシアムがプロジェクトに参画するにあたっての法的文書の準備が進められている。
ターミナルの稼働は2019年7月が予定されている。2017年第三四半期には国際ターミナルの改築が始まる。それと同時に、ハバロフスク空港に隣接する土地に、<エアシティ>のコンセプトのもとホテルや商業施設の入った高層ビルを建てる計画がある。将来的には商業娯楽施設とビジネスパークも合わせて建設する予定だ。
基本的に極東には、ハバロフスク空港の例に倣ってさらにもうひとつハブ空港を建設しうる用地がいくつか存在する。『この課題は討議の段階にあり、ウラジオストク、ユージノ・サハリンスク、イグナチエヴォ、ヤクーツク、ペトロパブロフスク・カムチャーツキーで検討されている』と極東発展省は話している。
たとえば、ウラジオストクの国際空港は2016年に185万人の乗客が利用した。今年、株式会社<ウラジオストク国際空港>は200万人以上の乗客数を期待している。同空港の航空路線網は45方面を数え、ロシアおよび外国合わせて18の航空会社が運航している。もっとも有望な方向は東アジア諸国に向けたルート網の開発である、とウラジオストク空港の広報はガゼータRUに語った。
しかしながら、専門家たちは官僚たちほど楽観的ではない。空港を建設して、乗客たちにとって快適な条件を作ることは、すべての地域で無条件に必要である、現代的で複合的な空港ターミナル施設があるのはウラジオストクだけだからだ、とこの分野を専門とする<アビアポルト>のオレグ・パンテレーエフ支配人は言う。しかし、もし仮に極東に完璧なハブ空港が登場するとしても、それは一つだけだろう、とも主張する。
『ハブ空港とは、広域航空路線網でまさにハブ部分を形成する拠点航空会社のことである。どんな地域でもガラスやセメントにカネをつぎ込むことはできるが、問題は、地政学の観点からより良い位置にある空港はどこか、住民の数と所得レベルから輸送が発達する可能性がより高い空港はどこか、という点にあるのだ。まさにそういった空港では航空会社もその航空路線網を拡大していくだろう』とパンテレーエフ氏は指摘した。
『ハブとは、空港の機能ではない。何よりもまず、その場所で運輸・輸送を行っていく航空会社なのである。この段階で、極東にハブ空港を造るというアイデアは思い切って捨て去った方がいい』と、経済大学の主任研究員アンドレイ・クラマレンコはきっぱりと言う。
ソ連時代、極東地域の拠点空港はその地政学的位置からしてハバロフスク空港だった。そこから首都への航空路が開かれていた。しかし、今は事実上、極東のすべての主な空港からモスクワに飛行機が飛んでいる。
もし乗客がマガダンからユージノ・サハリンスクに行く必要があるのであれば、ハバロフスク経由で飛ぶ方がむしろ良いので、この場合にはハバロフスク空港にハブ機能があると言えるかもしれないが、同空港を国際ハブ空港に変身させるというアイデアはまったく理解できない、とクラマレンコ氏は言う。極東の空港はアジアの北東に位置しており、そこには人はいないし、運んでくる物資もない。『たとえば、東京からハバロフスク経由で北京に飛ぶなど、想像しがたいではないか。要は、何のために? ということなのである』と付け加えた。
仮にハバロフスクあるいはウラジオストクの拠点となるのが航空会社<アエラフロート>の子会社<オーロラ>であるとしても、ハブを形成するには最低三つの条件がある:適切な地政学的位置にあること、(外国航空会社との競合環境で)運営経費の優越性を確保すること、安定した直行の乗客の流れがあること、である。今のところこの地域にはこの三条件の一つとしてない、とクラマレンコ氏は指摘するのである。」

うーん、なかなか難しそうですが、ロシアはあきらめないでしょうね。
<極東経済フォーラム>では、ロシアと朝鮮半島を結ぶ道路と鉄道の整備やガスパイプラインの敷設、北朝鮮の港湾活用なども、プーチン大統領は提唱したそうです。国際社会で北朝鮮に対する圧力が強まっている中、5月に発足した韓国の文在寅政権が北朝鮮に融和的であることを好機と捉え、自国の利益とロシア極東地域の発展、朝鮮半島での政治的影響力拡大につなげたい構えだ、と10月1日付産経新聞は分析していました。
ただ、<極東に国際的なハブ空港を造る>計画と同様にハードルが高く、なかなか実現が見通せない状況にあるのが現実のようです。



nice!(0)  コメント(0) 

斜陽のロシア映画界

今回は斜陽のロシア映画産業界の話です。
業を煮やしたメジンスキー文化相が映画産業界に一矢を投じて物議を醸している、という話は前回でも書きましたが、国から助成金を受けているのになかなか興行収益を上げられないというロシア映画界の苦境は相変わらず続いているようです。

8月31日付ガゼータRU紙電子版(https://www.gazeta.ru/)が、具体的な作品名を挙げて書いていました。

「ロシアの映画産業は深刻な赤字状況を脱していない。現行の国家援助のスキームはその非効率性を立証した形である。1990年代の初めから、国家の援助を受けて撮影された映画のうち、黒字となったのは20作品以下だ。文化省はこれをロシア映画作品の宣伝力が弱いからだとしている。
今年のサマーシーズンもロシア映画にとっては失敗に終わった。<映画フィルム賃貸通報>のデータによると、3か月間の興行収入の総額は110億ルーブル(約2億1300万円)を超えたが、そのうち国内映画分はたった4億ルーブルに過ぎない。唯一元の取れたフィルムは「軽率なお婆さん」だった。国からの資金援助を受けずに撮影されたこのコメディは、今年でやっと4番目の収益を上げた映画となった(「引力」「気晴らししろよ、ワーシャ」「花嫁」に続いて)
『誰も見ない映画を撮ることにどんな意味がある?』とメジンスキー文化相は問いかけた。『ロシア映画は失敗したシーズンだった』と、同相はこれを宣伝力の弱さと結びつけてコメントした。
しかしなら、国から助成金をもらっているのに相変わらず採算が取れない状況のままであるといっても、これは単にロシア映画が興行収入を上げるのにたまたま失敗したというだけの話ではない。<キノデータ プロ>のデータによると、2016年度にロシアの映画館では141本の国内映画が上映され、1億3460万ドルを稼いだが、その制作費には2億8630万ドルが費やされている。かくして、我が国の映画産業界の赤字はおよそ2億2000万ドルとなった。興行収入の半分は映画館側が持っていくからである。国が無償で融資をばらまいた<映画の年>にあって、採算が取れたのは全部で8本の作品だけだった。
もっとも、2013年度の水準に並ぶこの2016年度の数字は、相対的には成果だと見ることができるかもしれない。2015年度は映画館での試写後に買い付けられた国産映画が全部でわずか5本だったからである(ちなみに、2005年から2014年までは少なくとも6本の国産映画が、2012年には14本の国産映画が封切られている)。この数字は何も2015年度の出した過去最低の記録ではない。興行成績ベストテンにロシア映画は一本も入らなかった。これは2003年以来最悪の結果だった。2015年度の国内映画産業の唯一意義ある成果は、観客動員数でアニメ「三人の勇士、馬で行く」がトップテン入りしたことだけであった。
1992年から2015年の7月までにシア映画は1400本(他の国との共同制作を含めて)封切られているが、そのうち採算が取れたのは81本だけである。<キノデータ プロ>のデータによると、この期間に国の援助を受けて撮影されたフィルムで黒字を出したのは10本だけであった。おまけに90年代初めから国は様々な回路で国産映画の支援に25億ドル以上を支出しているのである。
2009年から、ロシア映画産業への基本的な国家からの融資源となっているのが映画基金で、毎年約30億ルーブルを分配している(2017年度は国産映画をリードしている映画会社の企画に25億ルーブル、その他の映画会社の企画に5億ルーブル)。
あれこれの企画に出した具体的な支援金額を映画基金が開示していないことは問題で、これに対してはしばらく前に文化省付属社会評議会がクレームをつけた。同基金がそのサイトにそうした情報を載せたのは2014年が最後である。
ロシア国内で国産映画がヒットするチャンスはわずかであると計算して、プロデューサーたちは国際市場にフィルムを貸し出して投資を回収し、さらには儲けようとしている。<キノデータ プロ>のデータによると、2017年上半期でロシア映画は国外で2150万ドル稼いだ。これは国外でのロシア映画への関心には限りがあることを考えれば、かなりいい数字である。
国外で人気を博しているのは、アニメとホラーと戦闘隊員ものと作家性のある映画だ。ウィザードスタジオのアニメ作品「雪の女王」は、ロシア映画産業が国外で稼いだ総額の半分近く、900万ドルを稼いだ。もっとも、映画基金の援助を受けたすべてのアニメが外国人たちに受けたわけではない。「三人の勇士と海の皇帝」「ウルフィン・ジュースと彼の木彫りの兵士たち」は、2作品合わせて15万ドル稼いだだけだった(おまけに後者の作品はロシアでの興行成績も非常に悪かったが、それでもシークエルには映画基金が無償で資金を出している)
実験的な戦闘隊員「ハルドコール」は今年上半期で335万ドルを稼ぎ出し、ロシア国内では失敗したコメディ「後援者たち」は330万ドルを稼いだ。ホラー映画「花嫁」は少なくとも国外での興行収入を倍増する見込みがある(制作予算は110万ドル、ロシアでの興行収入は300万ドル、国外での興行収入は今のところ222万ドル)
バレー界における現代の<アンファンテリブル>、ダンサーのセルゲイ・ポルーニンを追った数か国の共同制作によるドキュメントフィルム「ダンサー、セルゲイ・ポルーニン世界一優雅な野獣」は、ロシア国内での興行収入は8万6700ドルだったものの、国外では91万ドルの成績を上げた。
キリル・セレブレニコフ監督のボリショイ・バレー inシネマ「現代の英雄」は、米国とカナダの映画館で上映され、14万ドルの興行収入をもたらした。これはシネバレーとしては非常にいい結果である。
セレブレニコフ監督に対する関心度は、以前から国外ではとても高い。2016年度カンヌ国際映画祭で独立系フランスプレスの賞を受賞した最新作「学生」は、監督自身の言葉によると、『欧州のほぼすべての国と米国が買い付けた。関心がとても高い(ロシア国内で100万ユーロ以下の低予算で制作された同作品は、ほぼ24万2000ドルの収益を上げた)。この長い間で初めて、1コペイカも国の金が使われていないロシア映画がカンヌに出品された。「チャイコフスキー」をめぐるごたごたの後(2013年、映画基金はセレブレニコフの同映画作品への資金援助を拒んだ)、わたしの他の映画作品への資金援助も断られ始めているのである』と、フォーブズのインタビューで語っている。
ユーチューブでバレー「ヌレエフ」の通し稽古断片の閲覧回数を考えれば(訳注:余談ですが、ボリショイ・バレー団がセレブレニコフ監督を招いて演出したソ連時代の有名なダンサー、ルドルフ・ヌレエフを描いた作品の7月初演が、2日前になって突然延期されました。ヌレエフは同性愛者であることを公表して、1961年にツアー先のパリで政治亡命しましたが、作品はそうした彼の同性愛者としての側面も描きだそうとするものでした。背景幕にはリチャード・アヴェドン撮影のヌレエフのヌードを使い、<異性の格好>で踊るシーンや合唱団全員の女装なども予定されていたそうです。これに<同性愛宣伝禁止法>に抵触することを懸念したメジンスキー文化相が待ったをかけたようです)、バレー「ヌレエフ」の映画版も国外では相当な興行収入を上げる可能性がある。セレブレニコフ監督自身は今、演劇プロジェクト「プラットフォーム」支援の国家資金6800万ルーブル横領疑惑で捜査を受けている身だ。自宅監禁のため、ヴィクトル・ツォイ(訳注:ソ連時代のロックバンド<キノー>の伝説的なボーカル兼リーダー)を描いた映画の撮影は中断されている。
2013年から2016年の期間に、映画基金は返済義務を条件に140億ルーブルから32億5000万ルーブルを分配した。文化省の計算によると、2016年12月までに基金に返済されたのは12億6000万ルーブルだけだった。今年の4月にメジンスキー文化相は、そのため裁判が行われている、と述べた。映画基金が数億ルーブル規模の返済を求めて契約者たちに訴訟を起こし始めたのは今年の1月からである。
メジンスキー文化相の意見によると、現在の状況は『審査の質が悪いことを物語っており、カネは賢く分配する必要がある』 映画基金の資金援助を受けて撮影・公開されるべきは「乗組員」「引力」「バイキング」といったスケールの大きな映画だ、という。(ついでながら、今年ブロックバスターとなりそうな映画で資金援助受けたのは16作品で、映画基金から基本的に国家資金援助を受けた作品リストは過去はもっと長かった)
映画基金自体の調査によると、製作費5億ルーブル以上をかけたロシア映画が、貸出用映画フィルムとしてはもっとも効率がいいという。というわけで、2016年に封切られた3本の映画、(映画基金は明かさないが、おそらく「乗組員」「バイキング」「決闘者」だろう)は平均制作予算8億9000万ルーブルに対し、約10億ルーブルの興行収入を上げた。総じて制作費より高い収入をあげる可能性は、スケールの大きな映画と製作費5000万ルーブルから1億5000万ルーブルまでの映画で、製作費がその中間に位置する映画は元を取れていない。
文化省内にはそうした意見が支配的で、映画基金に対し、主要な映画スタジオの興行収入が2億5000万ルーブルを下回りそうな作品への資金援助は奨励していない。しかしながら、それによって『経済的な効率性の高い小作品は抹殺されてしまっている』とプロデューサーのセルゲイ・セリヤノフは警告する。
製作者たちは多額の予算を追い求め初め、悲惨な結果を生んでしまっている。その際立った一例が、ロシアの映画会社<エンジョイ ムービーズ>である。かつては国内でもっとも成功した低予算コメディの作り手だったが、今は破産寸前だ。映画産業の専門家たちの話によると、<エンジョイ ムービーズ>は映画産業のリーダー格のリスト入りし、映画基金の無償補助金を受け取り始めたあと、高予算の作品の制作にのめり込んだが、次から次へと失敗した。最後の興行的な失敗作は例の「後援者たち」で、製作費3億8000万ルーブルに対し、興行収入は2億7300万ルーブルであった。
5月に共同創設者のサリック&ゲヴォンド・アンドレアシャン兄弟は、『自分たちの会社<大きな映画>に集中するため』、<エンジョイ ムービーズ>を去る、と伝えた。彼らの新作映画は予算2000万ドルのファンタジー「昏睡」だ。映画基金はすでに支援しているが、助成金の内訳はまだ不明である」

この記事で取り上げられているロシア映画の数々、日本で上映される機会があれば、ぜひご覧になってください。WOWOWでは時々最新のロシア映画が放映されるので、私個人は楽しみにしています。

nice!(0)  コメント(0) 

<ロスコスモス>、2050年までの大風呂敷広げる

宇宙分野ではソ連時代からそれなりの実績を持つロシアが、遠大な計画を打ち出そうとしています。もっともこれは今に始まった話ではありませんが・・・
国家企業<ロスコスモス>を中心として、30年先までを見込んだ大風呂敷を広げてみせる意気込みのようです。
8月29日付イズベスチヤ紙電子版(https://iz.ru/)が書いていました。

「宇宙活動の国家コーポレーションが、ロシアの宇宙技術の製品ライン化と育成、世界市場への進出に関する諸提案の作成を命じた。三分の一世紀先、すなわち2050年までを想定したプログラム作成の目的は、宇宙サービス市場におけるロシアの立場の強化とその新分野の開拓である。計画文書は11月までには仕上げられるはずだ。
文書の準備を委託されたのは、連邦省庁にサービスを提供している省庁間分析センターである。戦略の作成に対して、<ロスコスモス>はその予算から1700万ルーブルを支払う、と議定書に書いてある。
2017年末までに、要となる製品方向で商業的な効果を上げる道路マップが作成されなければならない。道路マップは、宇宙関連製品を製造・促進する技術的かつ社会経済的、商業的かつ組織的なあらゆるアスペクトを考慮したものでなければならない。国家コーポレーションの経営機関の承認を得た後、同道路マップは<ロスコスモス>の長期的目的を達成する基本的手段の一つとなるだろう、と、<ロスコスモス>広報はイズベスチヤ紙にコメントした。
道路マップ作成に当たっては特定目的の市場が戦略的に調査される。その中ではグローバルな長期的傾向と2050年までの展望を見据えた新市場分野への参入メカニズムと製品ライン開発のマーケティングの改善にアクセントが置かれる。2050年までのプログラムには、宇宙観光や衛星ナビゲーションや地球撮影、通信や放送分野でのサービスを含む打ち上げと有人宇宙航空市場の発展の展望が提示されるはずである。
そのほかにも<ロスコスモス>は、ロシアはまだ参入していないもののそれなりのポジションを占めることができそうな二つ以上の商業的に魅力的な新市場を発掘するように注文を付けたという。
また同文書では、30年以上の長期的視野における宇宙サービス市場へのグローバルな挑戦の影響も評価されるはずである。すなわち、市場が変化していくというファクターと様々な地政学的・技術的・社会的・経済的および自然界の出来事が市場にもたらす結果というファクターが確定されるはずだ。
文書にはロスコスモスの最適製品ライン-宇宙技術とサービスそのもの-をどういう風に形成するかという提案、そうした供給を市場に出す時期、その耐用サイクルの予測なども盛り込まれなければない。プログラムによって潜在的な消費者や<ロスコスモス>のパートナーとなるかもしれない企業の発掘とその協力形態の在りかた、また競争相手の見きわめとそのビジネスモデル戦略の分析も想定されている。
宇宙政策研究所の学術主任イワン・モイセーエフは、2050年までの長期的プログラムの作成は時期に適っていると見ている。『我が国では新製品を作るスピードがそれほど速くないことを考えれば、少し先の将来を見越すことが望ましい』とイズベスチヤに述べた。
同主任の言葉によると、実質的には今日の<ロスコスモス>は、外国の衛星を打ち上げて、国際宇宙ステーションに宇宙飛行士たちを送り届ける市場でしか力を発揮していない。『それと同時に、宇宙活動のもろもろの成果を活用する市場、例えばゾンドを使った地球の遠隔観測、衛星ナビゲーションや通信、あるいはその組み合わせといった分野でのプログラム供給、新装置や新サービスでは、もっとも大きな展望が開けてきている。究極の利用者に役立つような製品を掲げて市場に出ていく必要がある。一例として、養蜂業者向けの一つのサービスの中にナビゲーションと衛生撮影を組み合わせたオーストラリア人たちの試みが挙げられるだろう。このサービスは現地で巣箱の配置を最適化するのに役立ちうる』とイワン・モイセーエフは語った。
宇宙航空術の普及者ヴィタリー・エゴーロフは、新サービスのチャンスは惑星間での宇宙船打ち上げ分野にあると見ている。『惑星間で宇宙船を打ち上げる市場が有望であるように思われる。そうしたサービスはまだ誰も提供していない。月あるいは火星に基地が建設されれば、食糧や燃料を積んだ貨物船の打ち上げでその供給を保証することができる。2050年までには、そうした市場が生ずる可能性は十分にある。様々な国の様々な企業が将来的にはアステロイデに眠っている有用鉱物の発掘に着手したいと表明していることを考えれば、ロスコスモスはこの分野でも独自のサービスを提供できる可能性がある』とヴィタリー・エゴ―ロフは指摘した。
これはロスコスモスが近年準備した初めての計画文書ではない。3月末には、2030年までの発展戦略をすでに発表しているし、2016年には2016年から2050年にかけての連邦宇宙プログラムが政府によって承認されており、その中でこの先10年間のロシアの宇宙活動のパラメーターすべてが明らかにされている。
これ以外にも、2013年に承認され、国産の宇宙航空術の目的と課題が書き記されている<2030年までおよびそれ以降のロシア宇宙活動発展戦略>が、ロスコスモスにとってメイン文書である。
2030年までの発展戦略を作成する枠内で、ロスコスモスは宇宙サービス市場の現状と展望の評価をすでに行っている。<戦略>ではこの市場規模は3250億ドル(2015年度評価)と見積もられ、そのうちロシアの分け前は234億ドルと見積もられた。2016年度にロシアが宇宙サービス世界市場で占めた率は4.8%、ロスコスモスの計画に従えば2030年までにはこの率が9%にまで成長するはずである。
将来性のある部門として、ロスコスモスはナビゲーションサービス、宇宙撮影、衛星通信などを挙げている。」

物事を大きく描くことが大好きなロシア人にとって、宇宙は格好の分野です。
絵に描いた餅であろうと、ロマンがロマンを呼ぶ世界です。
立派な資本主義経済の現代ロシアでは、そこにしっかりしたビジネス感覚も植え込まれているようです。


nice!(0)  コメント(0) 

野党勢力の後援者ホドルコフスキーのナヴァルヌィ評

プーチン大統領と対立した元石油大手<ユコス>社の社長で、横領と脱税の罪で2003年に逮捕され、2005年の裁判で有罪が確定して8年間の自由剥奪を言い渡されたあと、同社の石油を横領してその売上金を洗浄した罪まで着せられて、結局2010年に14年間の矯正施設送りを宣告されたミハイル・ホドルコフスキーについては、これまでにもたびたび書いてきました。
2013年12月に、プーチン大統領の恩赦により自由の身となった後も、国外から野党を支援し続けています。
そのホドルコフスキーですが、現在ロシア野党勢力の筆頭に立って反プーチン活動を展開し、大統領選への出馬もあきらめていないアレクセイ・ナヴァルヌィ氏とは、どうも相性が悪いようです。
8月9日付のウトラRU紙電子版(https://utro.ru/)が、人気ブロガーのインタビューを受けたホドルコフスキー氏のナヴァルヌィ評を伝えていました。

「もし大統領選で野党政治家アレクセイ・ナヴァルヌィが勝てば、極めて厳しい時代がロシアを待ち受けることになるだろう。石油企業<ユコス>の元社長ミハイル・ホドルコフスキーがそうした見解を述べた。ビデオブロガー、ユリヤ・ドゥーヂャのインタビューを受けて、ナヴァリヌィが大統領になれば、我が国には専制体制が到来するだろう、と述べた。
ホドルコフスキーは様々な野党政治家を支援していることで知られている。以前には一度ならずこの<汚職と闘う基金>創設者への支持を表明し、もしナヴァルヌィが2018年のロシア大統領選候補者として首尾よく登録されたならば、彼を支持するつもりであると言明していたのである。しかしながら、かつてはロシア最大の民間石油企業を率いていた彼が、今やナヴァリヌィが勝利するかもしれないと考えると矛盾した感情を抱いてしまうというのだ。
『一方では、ナヴァリヌィの勝利を喜んで受け入れたい。なぜなら、政権交代は良いことだからだ。しかし、またその一方で、私はロシア国民に告げたくなるのである。皆さん、困難な時代にしっかり備えておきなさい、と。』とホドルコフスキーは打ち明けた。
自分はリベラルであり、政権交代の原則を信奉していると言明しているこの野党政治家について、ホドルコフスキーは自身の見方を次のように語った。ロシアは今後5年から6年の間に再び『国内に合法かつ正当の中心がただ一つだけ存在し、それが決定を下す全権を有し、そのほかすべてのものは彼に依存するという、誰にも受け入れがたい独裁政権のシステム』に転がり落ちていく、という。まさにこれこそが現在わが国で起きていることだが、仮にナヴァルヌィ政権の時代になったとしてもそうなるだろう。そうしたことが起こらないようにするためには、ナヴァリヌィだけではなく、『ほかの人たちも』政権に入ることが重要だ、とユコス元社長は付け加えた。
ホドルコフスキーは、ロシアの歴史ではすべての指導者が、かなり穏健でリベラルな統治者から厳しい独裁者に変貌してくという同じ道をたどる、と残念そうに認めた。『プーチンも大統領に就任して最初の頃はもっとリベラルだったではないか。私がよく付き合った人々がすべてこの悪しき進化の道をたどった。だからこそ、もし仮にアレクセイ・ナヴァルヌィが政権に就くとすれば、一連の新しい人々を入閣させることが極めて重要なのである。プーチン後は誰になるか、ではなく、プーチン後はどうなるか、という風に問題を立てる方が正しいからだ』と彼は付け加えた。
ホドルコフスキーは、ロシアでは大統領制議会主義あるいは議会制共和制に移行するのが有効なのではないか、と提案した。我が国で統治形態の変容と政権交代は今後8年の間に起きるだろう、とも述べた。
ロシア大統領選は2018年3月に予定されている。アレクセイ・ナヴァルヌィは立候補の意志を表明し、大統領選自体は公式にはまだ始まっていないにもかかわらず、活発な選挙戦を繰り広げている。しかしながら、中央選挙委員会では、抹消されていない前科が存在するという理由でナヴァリヌィが候補者として大統領選に参加することは不可能であるとした。
これまでホドルコフスキーは、ナヴァリヌィが大統領選に立候補する可能性はクレムリン当局の一部にとって有益かもしれないという見方も排除していなかった。『大統領府の一部の人たちは』、大統領選への関心を高めるために、アレクセイ・ナヴァリヌィを政治舞台のプレーヤーの一人として利用したいと思っている、と今年2月に某インタビューで発言していた。」

アレクセイ・ナヴァルヌィが強く匂わせている愛国主義者的・民族主義者的な側面が、欧米色の強いリベラル感の持ち主であるホドルコフスキー氏に違和感を抱かせているのでしょうね。独裁政権の後にはリベラル政権が来るという保証も、そして欧米的なリベラル政権がうまく機能していく、という保証も、残念ながら、ロシアにはありませんから。


nice!(0)  コメント(0) 

<ズーベルバンク>ゲルマン頭取とプーチン大統領の会談

仮に日本の安倍首相と民間の有力銀行頭取が会談した場合も、こんな感じなのでしょうか? わたしにはわかりかねますが・・・
ロシアの銀行業界で独り勝ちしているらしい<ズーベルバンク>のゲルマン・グレフ頭取が、今年上半期の業績結果をプーチン大統領に報告したそうです。
8月7日付のイズベスチヤ電子版(https://iz.ru/)がそのやり取りをかいつまんで載せていました。

「ロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチンは<ズーベルバンク>頭取ゲルマン・グレフと会談し、2017年度上半期の業績報告を受けた。<ズーベルバンク>の純益は昨年比で6%増えて3170億ルーブル(役5995億円)に達し、中小企業からの融資申請数も増えた。ロシア大統領は、これはロシア大企業の周りに中小企業が生まれていることに関連しているのではないか、今日ロシア政府はそうした方向に動いている、と指摘した。
大統領は会談に入るや積極的に問いかけた。
―我が国の指導的金融機関の調子はどうかね?
―ありがとうございます。我々は上半期の業績結果をちょうどまとめたばかりで、純益は3170億ルーブルになりました。
―これは他の金融優機関すべてを合わせた収益のほぼ半分、いや半分以上ではないか。
―今年は銀行業界にとって昨年より良い年になるでしょう。その40%から50%は<ズーベルバンク>が寄与していると自負しています。
上半期だけでズーベルバンクの収益は過去最高と言われた前年度同期と比べて38%伸びた。
―しかし、もっとも重要なことは、今年は一連のトレンドが多くの面で良い方向に質的に変化してきているということです。当行では、昨年と比して法人に対しては11%、自然人に対しては20%、融資が伸びました。全体として、今年は初めて法人への融資が少しずつ増えつつあります。
ゲルマン・グレフの意見によると、今年の主な業績の一つは中小企業への融資がこの6か月間でおよそ6%伸びたことである。
―この3年間で初めて融資ポートフォリオが迅速に回復しています。
大統領がこれに解説を加えた。
―これは、国が資本参加している我が国の大企業がその周りに中小企業を生み始めたからかもしれない。君も知っているように、これは我が政府の方針の一つでもある。彼ら大企業が受ける注文の一部を中小企業に回すように促されていることが、こうした成長を呼んでいる一面もある
ゲルマン・グレフも同意見で、一連の要因の中で、中小企業への貸出金利が下がったこともこれを後押ししている、と述べた。
―我々は金利を大きく下げました。今日我々が中小企業に貸し出している金利を見れば、1年間で約4%から5%下がったことになります。
これは非常に大きな数字だと彼は説明し、ズーベルバンクは中小企業相手の仕事を最大限オートメ化した、と付け加えた。
―ああ、君が言っていたことだね。これはオートメ化の結果でもあると?
―はい、我々は融資の決定をする際に人工知能を活用し始めました。昨年の11月に、新商品を発売し、それを<スマート・クレジット>と名付けました。実は私は、質という点からして何かを大々的に広告することには大きな懸念を抱いておりました。いずれにせよ、プロセスをオートメ化する時には、ポートフォリオの成熟度がどんなふうに見えるだろうかとあれこれ気を揉むものですから・・
ところが、グレフの言葉によると、新商品を発売してから8か月間で、同銀は「記録的に低い返済の期限切れ」を定着させたという。
―我々の銀行ではクレジットのポートフォリオ全体で、返済の期限切れは総額1億7000万ルーブルしか出ませんでした。これは記録的に低い数字です。返済期限切れの総額がこれほど少なかったことはこれまでになかったことです
ズーベルバンクは2018年度にさらにもう一つの新規導入を図っている。新しいプラットフォームを有する銀行経営に移行しようと計画しているのである。
―その後2、3年の間にこの新プラットフォーム傘下の組織すべてを変えるつもりですが、それも我々が手掛けていきます。例えば、現在1万500人のプログラミストが働いている子会社<ズーベルバンク・テクノロジー>はIT分野でロシア最大の企業の一つです。
もしすべてがうまく運べば、2018年にはこの新しいプラットフォームを築き終えて、我々の<ズーベルバンク>は世界のデジタル市場でもっとも競争力のある企業の一つになるのではないか、と思っています。まず、その柔軟性によって多くの分野で仕事をすることができるようになります。第2に、1年や2年といったスパンではなく、1週間というスパンで新商品を市場に送り込むことができるようになります。もちろん、これは我々の意志決定、仕事のスピードにも大きく影響してきます
ロシア大統領は、新しいプラットフォームへの移行が<ズーベルバンク>の仕事の質に良い影響を与えることと期待する、と述べた。」

8月31日付のインタファクス通信によりますと、世界株式市場が好調さをキープしているおかげで、<ズーベルバンク>の株もうなぎのぼりで、ルーブル建ての国内株の上昇率でトップスリーに入り、歴史的高値を更新したそうです。
グレフ頭取が豪語するように、経営の多角化を武器として世界の金融市場に乗り出していけるかどうかは、今のところはなはだ疑問ですが、これほど大きく世界が動いて、大国の勢力図が流動化している時代です。密かに野望は抱いているのでしょう。

nice!(0)  コメント(0) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。