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外国製技術製品の買い付け禁止令、経済制裁が強まる中、生産現地化を狙う?

EUと米国は、マレーシア航空機の撃墜とウクライナ情勢の泥沼化に業を煮やして、冷戦後ではもっとも厳しい経済制裁をロシアに課す方向に舵を切ったようです。銀行間の金融取引中断や、軍事用途に転用可能な民間用機械や技術を含めた武器の輸出入禁止、エネルギー分野では深海や北極地での石油探査やシェールガス開発に必要な装備と技術の輸出禁止と、基幹産業にも踏み込んだ経済制裁となる見込みですので、青息吐息のロシア経済にとっては相当の打撃になりそうです。

ロシア政権内にも、危機感はあるのでしょう。早めに手を打っておかなくては、という焦りもあるのでしょう。
欧米諸国の共同制裁合意に先立つ7月14日、メドベージェフ首相は、国家機構が外国製の自動車及び技術製品を買い付けることを禁止する法令に署名しました。
「各種商品やサービスを手に入れるのに、連邦予算から巨額の資金が割り当てられている。当然ながら、外国の企業ではなく、国内企業によって調達される方が望ましい。もちろん、品質と価格において、国内企業が外国企業と競争できる場合には、である」と副首相会議で発破をかけたそうですが(7月14日付インタファクス電子版http://www.interfax.ru/)、奥歯に物が挟まったような言い回しで狙うところは<現地生産化>の方向みたいです。外国の技術製品でもロシア国内で生産されればロシア製ということになる、というドヴォルコヴィッチ副首相の詭弁(?)も含めて、7月15日付のコメルサント紙電子版(http://www.kommersant.ru/)が伝えていました。

「昨日メドベージェフ首相は、国と地方自治体による外国製技術製品の買い付けを禁止する法令に署名した。外国車の利用禁止令は、官僚から地方自治体、公共事業団体にまで及ぶ。
外国ブランドにとってこの禁止令を迂回する方法はただ一つ、生産の現地化であり、2018年までに60%から70%がそうなるに違いない。自動車とトラクターに続いて、将来的には繊維工業と医療機器の国家買い付けにも制限がかけられそうだ。
メドベージェフ首相は、昨日行われた副首相らとの会議で、外国製技術製品の国家買い付けの制限リストを作成し、『公共交通機関や救急部隊や予算関係機関で使用されている専門技術製品、公共事業や建設現場その他全般的な分野で使用されている一般技術製品も対象となる』と伝えた。
もっとも首相は、その一方で、この法令文書は外国企業との協力を完全に拒むことを意味するものではない、と本音も漏らした。反対に、一連の技術において、現地生産も含めたロシア企業と彼ら外国企業との生産協力の発展を見込んでいるのである。
アルカージー・ドヴォルコヴィッチ副首相が説明したところによると、<外国製>という言葉に、<外国産の技術>という意味をもたせることはできなくなるだろう、という。『<外国製>とは、ロシア国内ではないところで生産された技術製品と解釈される』、つまり、<外国製>とは、国外で創造された外国ブランドではなく、ロシア以外の国の領土で生産された技術製品である、と考えているらしい。その際、ロシア国内で生産される外国ブランドは、契約によって条件づけられた現地生産化のレベルに達していれば、今回の法令枠ではロシア製である、ということになる。
ドヴォルコヴィッチ副首相の予想では、この現地生産化率は年々上がっていくだろう。 今のところは、各種企業で30%から40%だが、2018年までには60%から70%に達するに違いない。『もし国内企業がこの計画表を履行していけば、市場における通常の取引条件に限られず、生産した技術製品を国にも地方自治体にも売ることができるようになるだろう』と副首相は強調した。
ドヴォルコヴィッチ副首相はさらに、リストの作成に当たっては、ロシアに存在する生産力と生産潜在力、及び国内企業がもくろんでいる外国企業との共同事業計画を分析した、と述べた。『あらゆる見地からして、妥当且つ競争力のある品質と、競争相手企業のレベルに相応する価格を備えた技術製品をロシア国内で生産することができるようになると確信している。いかなる価格の吊り上げも起こらないし、競争条件が犯されることもない』
同副首相は、追加的論拠として、連邦独占禁止局もこの施策を承認したことを引き合いに出し、『我々はロシア産業の優位を完全に実現し、こうした補足的特恵によって我が国の産業を新しい技術レベルにまで引き上げることができる』と自信を示した。
政府は、自動車やトラクターの国家買い付け制限にとどまるつもりはないらしい。同様の施策が、繊維工業にも医療機器の買い付けにも導入されそうである。これら二分野の制限リストはまだ作成に取り掛かったばかりだが、『こうして、市場に必要なバランスを保ちつつ、最終的にはサービス向上を促進できるのではないかと期待している』と、昨日の会議を首相は総括した。
かなり以前から検討されていた、国家買い付けにおいてロシア産業を優先する方策の導入を今この時期に決めたのは、おそらく偶然ではないだろう。ここ数か月ロシアの投資需要の落ち込みが続き、輸入プラントや輸入自動車のみならず、ロシア製品とその生産ラインにまで影響が出ている状況にあって、輸入規制は少なくとも象徴的にはロシアの計画、つまり、まずは国にとって最大の外国納入企業を現地化する計画を、下支えしてくれるかもしれない。
もっとも、競争制限は一時的な手段であるとは、ホワイトハウスは見なしていない。
今のところは、今後<現地生産>された製品の価格が否応なく上がって行けば、政府は輸入プラントにかける禁止令を、もっと緩やかな優先図式、例えば、連邦契約システムの形でロシア企業への買い付け優先を強化するといった構想に切り替えざるを得なくなるだろう、と予測されるだけである。」

将来的に輸入制限を掛けたい医療機器に関しては、まだ調整段階のようです。インタファクス通信(同前)によりますと、メドベージェフ首相は、医療機器市場の状況は良くなってきてはいるものの、国内製の医療機器が外国製の医療機器に対して競争力を持ちうるまで、外国製の医療技術を完全に拒否する必要はない、と述べました。
『我が国の医療産業は一人前になった。10年、15年前に比べれば、もちろん、天と地の差だ。現代的な医療機器がロシアで大量に生産されているが、それは我が国にはまだない医療技術まではねつけるということを意味しない。これはきわめて微妙な境界線であり、注意深く進める必要がある』と。
統制と規制が停滞を招いたソ連時代の経済に逆戻りすることを懸念してか、「連邦独占禁止局が、今後の推移を注意深く見守っていく必要がある。というのも、こうした文書を採択した後には、これで自分たちが何をしようとしまいと人々は買ってくれるといった、安堵と弛緩が訪れることが多々あるからだ。」とくぎを刺すことも忘れなかったようですが・・・




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