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SNSの違法情報削除と拒否した場合の罰金法案が提出される

ロシアで、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で流布される情報の違法性を問題視する法案が提出されました。今年6月末にドイツで議会閉会前に駆け込み可決された同様の法案を念頭においているようですが、欧州の民主主義国ドイツならいざ知らず、ロシアでのこうした法案の提出は、どうも素直に受け止められません。
7月13日付反政権派の新聞ノーバヤガゼータ電子版(https://www.novayagazeta.ru/)に載っていた記事です。

「政府与党<統一ロシア>党下院議員のセルゲイ・ボヤルスキーとアンドレイ・アリシェフスキッフが、ユーザーの苦情により信ぴょう性のない違法な情報を削除することを拒んだソーシャル・ネットワーキング・サービス管理人には罰金を課すように提案した。
法案執筆者の一人であるボヤルスキー議員の言葉によると、罰金の額は自然人に対しては300万ルーブルから500万ルーブル(約550万円から900万円)、法人に対しては3000万ルーブルから5000万ルーブルを想定している、という。
ノーバヤガゼータの取材に対し、同議員は対象となるのは200万人以上のユーザーを持つ大きなSNSである、と説明した。法案の規定はメッセンジャーたちには関係ない、とも念を押した。
メッセンジャーがいなくてはやりにくくなるだろう、彼らは情報流布組織者ではない、テレグラムにはそうした兆候があったとはいえ、である、とボヤルスキー議員は説明した。『この法案はちゃんとした国民に決して関係してくることはなく、何も怖がることはない・・・法律はユーザーたちの権利が侵されることから彼らを守るためにある。ちゃんとした国民はこうした法律が生まれたことに気づく必要さえない』と言明した。
議員たちはSNSの管理人たちに何を要求しているのだろうか?
SNSのページに、禁止されている情報にユーザーたちがクレームをつけることができるようにするための電子フォーマットを置く、という。ユーザーたちが24時間いつでも、名誉と尊厳を傷つける正しくない情報に苦情を訴えることができるような、24時間機能の行政機関を創設する。そうした情報とそのコピーを、管理人たちは24時間以内にブロックするか削除しなければならなくなる。
ユーザーたちはこうしたソーシャル・ネットワーキング・サービス行政の決定に反論する権利も有する、とボヤルスキー議員は明確に述べた。『こうやって我々は、SNS分野を自己規制するシステムを作っていく。これはもちろん、マスコミ規制監督局が不要になるということではない。同局は今後もその役割を果たしていく』と議員は説明した。
SNSの管理人たちはまた、3か月に一度ユーザーたちのクレーム申告を審査した報告書を作成し、それをネットに載せて公にアクセス自由にする義務を負う。『この報告書に関しては、我々議員の間でも大いに論争した。私の個人的見解では、これは統計に役立ち、その後トレンドを理解して何らかの補足的決定を採択する助けになるのではないかと思っている』とボヤルスキー議員は言う。
削除されブロックされたネット上の情報は3か月間保存されなければならない。同議員の言葉によると、この保存期間については、今後の法案の議論次第で変わりうるという。その代表部はロシア国内に置く。『人々がいつでもコンタクトできるように、公開コーディネートの公開オフィスを開設すべきである』とも説明した。
法案メモによると、対象となるのは<明らかに戦争プロパガンダや民族的、人種的、宗教的憎悪と敵愾心をたきつける情報>である。そのほかにも、広がれば行政的にも刑法的にも罰せられるような情報、信ぴょう性が低く、名誉や尊厳や評判を傷つけるような情報も削除すべきである。
ボヤルスキー議員は、SNSグループがいかにして24時間以内に情報の信ぴょう性と違法性を判定するのか(特にそうした情報が多い場合に)、明確にはしなかった。同議員の言葉によると、この問題は当事者のSNSグループとマスコミ規制管理局も交えて検討されるだろう、ということである。
ボヤルスキー議員の説明するところ、議員たちがこの法案の下敷きにしたのはもっぱらドイツの経験だった。『ドイツはこの問題に真剣に取り組んでおり、我々も彼らの憂慮を共有している』からだ。『罰金額についてははまったくドイツの例に合わせている。欧州委員会ないしは独占禁止局の決定によってグーグルが支払わされた罰金額に注目してほしい。巨額だが、問題は深刻な違反があったということなのである。もちろん、SNSグループはまず警告を受け、正しくない情報の削除あるいはブロックに対して24時間の猶予を与えられる。ドイツではそうした情報の削除に対してどれだけの時間的猶予が与えられているか。そうした場合、ドイツでは5000万ユーロ以下の罰金が規定されていることにも注目してほしい』と同議員は指摘した。
さらに法案のもう一人の起草者であるアンドレイ・アリシェフスキッフは、ノーバヤガゼータの取材に対し、罰金額に関しては法案の検討過程でこれより高くしてもいいし、安くしてもいい、と提言した。削除あるいはブロックされた情報の保存期間についても同様である。
『私としては今この時点で罰金額ばかりに注目してほしくはない。重要な課題は、一石を投じてこの提唱を討議に持ち込むことだった』とアリシェフスキッフ議員は述べた。彼はまた、ドイツで同類の法案が討議されたとき、『言論の自由の侵害であると本気で憤慨する声は上がらなかった・・・これはまったく違った問題であり、国家は正しくない情報から社会を守るための政策を行うのである』と同議員は言明した。
6月30日、ドイツ議会は休暇前の最終会議で、SNSが違法な情報、特に憎悪を煽るような違法情報を内容として持つポストを効果的に削除しない場合には、5000万ユーロ以下の罰金を想定した法案を可決した。このドイツの法によると、<明らかに違法な情報>は24時間以内に、その違法性が明らかでない情報は1週間以内に削除しなければならない。BBC放送は、これは『この種の法律としては世界で最も厳しいものの一つ』とコメントしている。 同法の発効は2017年10月となっている。
一方、人権擁護者たちは、SNSグループがコンテンツの違法性を調べて削除するのに与えられている時間的猶予が<厳しすぎる>、と、法案を批判している。人権擁護者たちは、この法律は不測の検閲の要因ともなりうる、とも指摘する。SNSグループは『罰金を払わないために、いかがわしい危うげなポストは削除したいと思うからだ』と。
インターネット発展問題担当のロシア大統領参事官ゲルマン・クリメンコは、議員たちが提唱している罰金額は『若干の驚きを呼ぶだろう』と述べ、事前に『「業界関係者らの助言も受けずに』法案を提出したことは遺憾である、と表明した。」

本当に難しい問題ですよね。
民主主義国でも、大統領がマスコミに対して大っぴらに対決姿勢を誇示している国もあれば、ある程度の情報統制は必要なのではないか、と思い始めている国もあります。
情報は、自分の内にではなく、外に求めるものなので、どうしても求める者の咀嚼力というものが必要になりますよね。人間は自らが創造した技術に常に試されている存在なのではないか、と私は時々思ってしまうのです。
インターネットという強力な情報発信・受信技術を誰もが駆使できる時代を後戻りすることはもはや不可能です。たとえ一強国家や独裁国家でも、その監視の目がネットの隅々にまで行き届くことはありえないでしょう。怖いのは、国家による情報統制の刃が、恣意的に一国民、一個人に向けられることです。その傾向は当然、民主主義国より似非民主主義国の方が強いでしょうから、プーチン・ロシアでこうした法案が掲出されることには、やはり懸念を抱かざるを得ません。







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