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出生率の低下は欧米の経済制裁だけに因るものか?

私は読んでいないのですが、米誌フォーリン・ポリシーが<西側の制裁がロシアの人口を縮小させている>という内容の記事を掲載したのだそうです。
当然ながら、ロシアの官僚やアナリストたちは、こうしたいささか一面的な論拠には反駁しています。
11月8日付の独立新聞電子版(http://www.ng.ru/)が、出生率の低下を含めたロシアの人口学的状況について、その原因にも触れて、次のような記事を書いていました。

「官僚たちは死亡率の低下ばかり報告するが、出産率も下がった。専門家たちはこうした傾向を人口学的崩壊と呼び、米誌フォーリン・ポリシーは<西側の制裁がロシアの人口を縮小させている>という記事を掲載した。
今年初めから死亡者数は3万2000人減った、と社会問題担当副大臣オリガ・ゴロデッツは報告した。同副大臣は、ロシア連邦の平均寿命が72,5歳になったことは『保健制度全体の確かで大きな成果である』と述べた。しかしながら、ロシア統計局のデータによると、2017年の9か月間で生まれた子供の数は127万2000人で、これは2016年の1月-9月期よりも16万4000人(11,5%)少ない。
官僚や幾人かのアナリストたちは、人口学的数値の悪化を石油収入の落ち込みと西側の制裁に伴った2014年から2016年の経済危機に糊付けしようとする論拠に反論する。出生率の低下は、経済の深刻な落ち込みによって国が人口学的な穴に落ち込んだ90年代にすでに埋め込まれていた、1987年と1993年の間で出生数はほぼ二分の一になった、というのが彼らの言い分である。
『2015年から2020年までは、四分の一世紀ごとに繰り返されるネガティブな人口学的周波が一度に共振する』とプーチン大統領は述べた。こうした周波は、大祖国戦争時代と90年代の経済危機時代の出生率低下によって説明される。今、後者の出生率低下時代にこの世に生まれた若者たちが子供を作る時代が来たのである。
それでもすでに1995年から2001年までには130万人近くのベビーが誕生し、2004年にこの数値は初めて150万人に達し、2007年には160万人を突破、2008年に170万人の数字に到達し、その後2012年からは2016年も含めて毎年190万人のベビーが生まれているのである。
しかし、昨年、初めての警鐘が鳴り響いた:2016年度、国内で誕生した子供の数は2015年度よりもほぼ5万2000人少なかったのだ。自然死の傾向も表面化し始め、昨年度は死亡者数が誕生者数を2200人上回った。
政治クラブ<ロスバルタ>の専門家たちは、2017年度にはこの数字は10万人を超えるだろうと予測する。つまり、2倍3倍ではなくて、100倍単位で増えていくというのである。
公正を期して述べておく必要があるが、現代ロシアで誕生者数が死亡者数を上回った恵まれた年はたった3年しかなかった。2013年から2015年までは約3万人のプラスだった。そしてこれは実際、1995年から2005年まで毎年100万人もの人口を<失っていた>国民の業績でもあった。一方では10万人の切れ目など国にとっておそるるに足らずだが、また一方では、あの崖っぷちには誰も戻りたくないというところなのである。
『出生率が所得に左右されることは疑いない』と<テレトレード>社のアナリスト、マルク・ゴイフマンは言う。『2014年に国民の実質所得は0,7%減少し、2015年には3,2%、2016年にはさらに5,9%も減少している。2017年9月には、2016年9月に比して0,3%の減少だ。これは平均的な数字とはいえ、将来子供を持つ可能性が現実に減少していることを示すものである』
『出生率は社会の空気を推し量るもっとも確かなインジケーターの一つである』とプレハノフ名称ロシア経済大学のキリル・パルフェノフ助教授は述べた。『子孫を持とうという心構えには様々なファクターが作用し、総体として<子供を独り立ちさせることができるかどうか>という形で決定されうる』という。こうしたファクターの一覧表で決め手となるのは、平均レベルでの安定した収入だけではなく、明日への確信、良質な医療サービスや教育の存在である、と。
以上の指摘は明白なことではあるが、統計が示すところ、必ずしも正しくはない。総和して出生率が最も高いのは、生活水準と社会分野の発展が低いアフリカ諸国なのである。一方、先進諸国では人口減少問題が深刻だ。ロシアでも、満ち足りている連邦主体の出生率は経済破たん寸前の連邦主体よりも低い。出生率の低下を経済危機で説明しようとする試みは、表面的な判断であって、残念ながら正しくはない。人口学にあっては、正確な判断を下すという役割は経済には存在しえないのである。
『出生率の低下に影響を与えたのは主として経済的ファクターではあったが、それだけではない』と、ネットカフェ<ダブルビー>創始者のアンナ・ツファスマンは独立新聞に述べた。『基本的な原因は生活レベルの低下に潜んでいる。もう一つの要因は、(主として経済に起因するものではいえ)、社会の不安定感と不安感のレベルが上がったことである。明日はどうなるのか確信が持てなければ、明らかに出生率は上向きようもない。こうした状況を正すためには、国家は母親支援といったポイント的な施策ではなく、国民の生活レベル全体を向上させる総体的な努力が必要不可欠である』と指摘する。
『我が国では家族を営む施策に振り向けられる予算が極めて少ない』と社会科学的審査研究所のセルゲイ・ルィバレチェンコ所長は言う。『子供向け予算は国民総生産の0,5%から0,6%レベルだ。一方、人口学的状況が良好な欧州諸国では4%から5%である』
『経済の落ち込みと国家予算の大幅赤字で、国家は出生率を上げる施策を取ることができなかった。母親手当は2年前に指数化されることをやめ、生活水準が全般的に低下する傾向と社会分野の停滞を打ち破る力をもはや持っていない。その重要性を疑う余地はないものの、このプログラムが施行されてきた10年間で、様々な援助証書が750万世帯に発行されたが、受け取った金額の92%は住居条件の改善に当てられていたのである』とマルク・ゴイフマンは指摘する。
まさにこうした住居問題の解決が、すでに子供がいる家庭がもう一人子供を作ろうとする大きな刺激になるかもしれない、と大統領付属の子供の権利全権大使アンナ・クズネツォーヴァは見ている。クズネツォーヴァが引用したロシア統計局のデータによると、2016年度に住居を必要とする子だくさん家庭として登録されていた13万1000世帯の内、5000世帯以上が住居を保障されたという。子だくさんの家庭を支援する施策の対象は、3人以上の子供を持つ家庭だけではなくなってきている、とも彼女は指摘した。『子供がいる家庭の内、もう一人子供が欲しいと計画している若い家庭もその対象として浮上してきている』と言うのである」

出生率低下と人口減少問題では、ロシアも日本もそれほど変わりはありませんね。


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