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プーチン大統領、サブチャック記者の質問に切り返す

昨年の12月14日に開かれた、内外の記者を集めた恒例のプーチン大統領の記者会見についてですが、大統領選への立候補を目指しているクセーニヤ・サブチャックが記者として出席し、注目されました。
プーチン大統領とサブチャック女史のやり取りについて、12月14日付のコメルサント紙電子版(https://www.kommersant.ru/)は次のように伝えていました。

「ウラジーミル・プーチンはアレクセイ・ナヴァルヌィをロシアのサアカシビリと呼んだ。クセーニヤ・サブチャックが反政権派の大統領選出馬を許可するかどうかについて尋ねた。
ウラジーミル・プーチンはアレクセイ・ナヴァルヌィをミハイル・サアカシビリになぞらえ、国民の大部分はロシアが『一つのマイダン革命からまたもう一つのマイダ革命に移行するのを見たくはないのだ』と述べた。大統領はテレビキャスター、クセーニヤ・サブチャックの野党派の大統領選への出馬を容認するかどうか、という質問に対してこのように応じた。
ある専門家は、こうした答え方は司法の判断を引用するよりも説得力があるように聞こえるかもしれない、と評価する。
14日に開かれた恒例の記者会見で、クセーニヤ・サブチャックはウラジーミル・プーチンに、『おそらくご存知だと思いますが、わたしも次期ロシア大統領選に出馬するつもりでいま』と言った。これまでにもサブチャック女史は、公式に自身の出馬を発表する前に、個人的にウラジーミル・プーチンにそのことを伝えた、と語っている。それは、プーチン氏が1990年代にサンクト・ペテルブルグ市役所で一緒に仕事をしていたクセーニヤの父、アナトリー・サブチャックのドキュメンタリー・フィルムのためのインタビューを受けた後のことだった。
サブチャック女史は記者会見にはテレビ局<ドーシュチ(雨)>の記者として出席していた。彼女の言葉によると、『プーチン大統領は討論に参加しないので、これが大統領に質問する唯一の手段だ』というわけだ。
『たとえば、アレクセイ・ナヴァリヌィという候補者がいます。彼に対して、わざわざ作り話の訴訟が起こされました。彼は欧州人権裁判所で自身の身の潔白を証明しましたが、それにもかかわらず、彼は大統領選への出馬を認められていません。このことに関して憲法裁判所は独自の見解を有しているとはいえ、です』とサブチャック女史は自身の質問を切り出した。『同じようなことが、私の選挙活動にも起きています。政治工作をする場所を貸すことが拒否されているのです。反対派であるということは、殺されたり投獄されたりする、ということなのですか?どうしてこんなことが起きるのですか?政権は正当な競争が怖いのですか?』
ウラジーミル・プーチンはサブチャック女史自身のスローガン、<すべてに反対!>を痛烈に批判した。プーチン氏は、テレビキャスターさんは誰に反対し、何に賛成しているのかね、と彼女に訊いた。『ロシア国民の立場で、政権交代のないことに反対しています!』と彼女は答えた。
『そうだと思った』と大統領は応じた。『野党は明確でわかりやすく、ポジティブな行動計画を持って登場すべきである。あなたは<すべてに反対>というスローガンを掲げているが、これがその、ポジティブな行動計画なのかね? あなたは、我々が今日議論しているあらゆる問題を解決するために、何を提案しているのか?』とプーチン氏はサブチャック女史に尋ねた。
大統領はこれまで通り、アレクセイ・ナヴァリヌィの名前には触れなかった。『あなたが言及した人物たちについてだが、失礼ながら、あなたは我が国に数十人のポロシェンコ(ウクライナ大統領)が走り回ってほしいのかね・・・』
政治技術センター副所長のアレクセイ・マカルキンは、ウラジーミル・プーチンは、アレクセイ・ナヴァルヌィは有罪判決を受けている身なので大統領選には立候補できないと説明しようとはしなかった、なぜならば裁判を引用しても、この野党候補者の支援者も反対者も納得させることはできないからだ、と見る。
『ナヴァリヌィの支持者たちは、ロシアには独立した裁判が存在しないと見ているし、彼の反対者たちは、政権は明日にでもその立場を変えるかもしれないと恐れている。例えば、<保守主義者>たちはこんなふうに考える。冬季オリンピックをボイコットする準備をしていたのに、突然、行くことになった、また、ウレンゴイの少年(訳注:ノーボイ・ウレンゴイのギムナジウムに通う男子生徒が、ドイツ連邦共和国連邦議会で、ソ連邦に侵攻したドイツ・ヒットラーの兵士たちをソ連兵たちが殺したことをドイツに謝罪する発言をした)を問題視していたのに、ペスコフ報道官が少年の弁護にまわった等々。そんな風に、明日になれば突然裁判所は、ナヴァリヌィは欧州人権裁判所の決定に基づいて無罪であると裁定するかもしれない。両義性を持たせることは誰も満足させることはできない。大統領ははっきりさせようとしたのである』と、マカルキン副所長はコメルサントに述べた。
プーチン氏は言明した。『サアカシビリ? いったい誰の名前をあなたはあげているのかね? サアカシビリはロシアの出版物にしか登場しない人物だ! あなたは我々に一つのマイダン革命からもう一つのマイダン革命に移行するのを味合わせたいのか? 我々はこうしたことすべてを、オリガルヒたちが黄金の魚を捕りつくして、国家が混濁した沼に変わってしまった時代に、すでに経験済みなのである。1990年代がそうだった。そして今、ウクライナがそうした状況にあるわけだ! ロシア国民の多くはもはやそんなことを望んでいないと私は確信している。我々がそんなことは許さない』 プーチン大統領は『政権は誰も恐れなかったし、誰も恐れてなどいない』と明言した。
アレクセイ・ナヴァルヌィは自身のツイッターで、はっきりした質問を投げかけたとして、クセーニヤ・サブチャックを称賛した。大統領の答え方を独自に解釈して、『今日、プーチンは初めて、わたしを出馬させないことを直接認めた。これは十分に意識した政治的決定である・・・<裁判と前科>についてなど、もはや誰も口にしていない。我々は影響力を持っている。それで、これは有害だと判断したのだ』と反体制派活動家はツイッターに書き込んだ。
2018年の大統領選への出馬をもくろんでいるアレクセイ・ナヴァルヌィは、12月13日に選挙戦公約を発表した。ナヴァリヌィ氏は政治改革、<弾圧的な法案>の廃止、最低賃金を2万5000ルーブルにまで引き上げること、軍隊の契約制への移行を約束している。前出のアレクセイ・マカルキン副所長は、こうした公約は、前科ゆえに大統領選に出馬できないナヴァルヌィに<追加のボーナス>は与えてはくれないだろう、と見ている」

プーチン大統領の反政権派への批判は、「国を不安定化させたいのか」という1点に絞られ、「多くのロシア国民はウクライナの政変がもたらしているような混乱の事態を望んではいない」とする主張に終始しているように見えます。
この記者会見の後、アレクセイ・ナヴァルヌィは24日夜に立候補の申請書類を中央選管に提出しましたが、案の定、選管委員一人は棄権したものの12人が支持して、翌25日に即刻却下が決定されました。同氏はすぐに抗議集会を開いて、大統領選ボイコットを国民に呼びかけています。
朝日新聞が伝えていましたが、何よりも嫌な予感がするのは、14日の記者会見でのロシア人記者たちの政権迎合主義の雰囲気です。サブチャック記者の鋭い質問にはヤジが飛び、反政権派はすべてに反対ばかりで、明確な政策を持っていないとするプーチン大統領の反論に大きな拍手さえ沸いた、と朝日モスクワ特派員は書いていました。
民主主義を支えているのは、曲がりなりにも言論の自由と責任であると私は思います。それが外部からの圧力、自らの自制や迎合で失われていけば、民主主義はその精神を失っていきます。<知>、すなわち自ら考え、判断し、責任を負う力が失われていくからです。
言論を武器とするメディアがその矜持をなくしていったら、その国はいったいどういう方向に進んでいくのでしょうか? それは我が国を含め、どの国でも懸念されることであると私は思っています。





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