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国民の実質賃金は上がり始め、可分所得は減っているという矛盾

ロシア政府は今、大統領選を意識してかもしれませんが、国民の実質賃金は上昇し始め、経済危機からの脱出は近い、と盛んに宣伝しています。一方門家たちの方は、それは甘い見方だと手厳しく、国民の可分所得は減り続けている、と指摘しています。
人間は見たい現実しか見ない、とはよく言われることですし、特に政治家はちょっとしたことでも、自分たちに有利なように、ご都合主義的に利用しようとしますから、国民はだまされないようにしなければなりません。

2017年12月19日付の独立新聞電子版(http://www.ng.ru/)が書いていました。

「ロシアの金融統計データによると、今年は国民の所得は全体として減ったにもかかわらず、実質賃金は上昇したことが認められる。賃金上昇のニュースはドミートリー・メドベージェフ首相内閣の評価で<大きなプラス点>となりつつある。しかしながら、専門家たちのデータによると、2017年度の国民の労働収入は増えるどころか、減り続けているのである。あたかも給与が上がっているかのように見えるのは、雇用者側のグレーな支払いを摘発しようとする税務署の圧力のもとに給与が部分的に合法化されたからだ。
給与が上がり始めたという公式筋の神話が、昨日、大統領付属国民経済&国務アカデミーで失墜させられたことは注目に値する。ロシア国内で実質賃金が上昇し始めたことを、多くの官僚たちは、これは重要な成果であり、危機からの脱出を示すものだと言いくるめようとしている。ロシア統計局のデータによると、10月の実質賃金は年率で4,3%上昇した。しかるに、国民の実質的な可分所得は減少し続けており、10月には1,3%減った。実質賃金は上がり、所得は相変わらず減り続けているという矛盾が認められるのはなにも四半期一期に限られたことではない。しかしながら、ロシアの官僚たちは、こうした点にはあたかも気づかないふりをして、実質賃金の上昇を大変な功績であるかのように言いつのっているのだ。
たとえば、メドベージェフ首相は、年末実績で国民の実質賃金は3%上昇するだろう、と強調していた。この3年間で、『国家予算分野での給与支払いが増えたということもあって』、実質賃金の上昇は約10%にはなるに違いない、と経済発展省のマクシム・オレーシキン大臣も語っていた。賃金の上昇というテーマについては、ウラジーミル・プーチンも毎年定例の記者会見で触れた。大統領は特に、2000年と比較して実質賃金は3,5倍に増えたと指摘したのである。
実質賃金は上昇しているのに可分所得自体は減っているというパラドックスを、大統領付き国民経済&国務アカデミーのエキスパートたちは説明しようとした。『このパラドックスは、税務署がグレーな給与支払いを撲滅する闘いを強化したことにより、表に出る給与と表に出ない給与との間で、表に出る給与に重点が移るような再配分が生じたことで生まれているのかもしれない』と。
つまり、我々が今日目にしているのは、賃金の実質的な上昇ではなく、むしろそれが白い、合法的なセクターに流れ出たということなのである。 自分たちの解釈の論拠として、同アカデミーの専門家たちは、国民の所得総額と個人所得税総額の動向に関するデータを引用している。特に、昨年も今年の1月から9月期にかけても、個人の所得税総額の伸びの方が国民の所得総額の伸びよりも高かった、と語る。いくつか計算をしてみると、企業収益、(隠された分を含めた)労働給与額、そして<雑収入>額は、実際の数式では2014年から2016年までの時期に前年度に比べて減少しており、また2017年1月から9月にかけても2016年度の同時期よりも減少している。つまり、私有財産に占める実質所得の割合が減少したことが2016年と2017年の1月から9月期に認められるのである、と報告する。一方、実際の数式上でこの時期の社会的支払い(まず年金)が上昇している点は、年金受給者数の増大と、2017年1月に5000ルーブル規模の額が年金受給者たちに一度に支払われたという事情が要因となっている、としている
全体として、今年10か月間の国民の実質的な可分所得は年間換算で1,3%減っている一方で、実質賃金とわずかとはいえ実質的な年金額はそれぞれ3%、3,9%上がっている、と指摘した。
実質的な貨幣所得の落ち込みは国民福祉レベルの低下を招く、と昨日発表されたロシア国民の社会的気分に関する報告書の作成者で、大統領付属国民経済&国務アカデミーの社会分析&予測研究所のタチヤーナ・マーレヴァ所長は語る。
『ロシア連邦全体として国民一人当たりの平均貨幣所得額は、2016年第三四半期における生活最低費の308%レベルから、2017年第三四半期には302%レベルにまで下がった。つまり、国民一人当たりの平均貨幣所得と生活最低費の相関比率は1,7%下がったわけだ』と同所長は続け、4年間ではすでに12%下がっていると強調した。『2017年第三四半期は2013年の同時期に比して、国民一人当たりの平均貨幣所額は生活最低費の344%レベルから302%レベルにまで落ちている。そして、過去4年間でこうした落ち込みは73の地方で認められ、上昇したのはたった10のロシア連邦主体だけである』とした。
2017年には貧困率も上がった。『ロシア統計局のデータによると、2017年第三四半期の貧困率は2016年同時期の12,8%に比して13,1%にまで上がり、過去6年間の同時期の貧困率よりも高くなった』とマーレヴァ所長は指摘する。
<実質賃金の上昇は存在しない>というテーゼは、小売業界のデータで統計的に証明されるケースがしばしばある。『2017年10月の小売流通高は2兆6000億ルーブルで、昨年同時期との比較可能価格で3%の増加、また今年10か月間の商品流通高の増加は前年の同時期に比して0,8%だった。しかしながら、2015年10月以降の2年間で、小売流通高は1,3%減少している。食料品や飲料品、たばこ類は2,4%も落ちているのである』とアカデミーは指摘している。
一方、この時期に食料品以外の商品の流通低下は事実上起きなかった点も強調している。例えば、所得の減少を背景に自動車市場といった分野での販売は復活しているのである。11月だけでも乗用車の販売数は年換算で15%増大した、と欧州ビジネス連盟は報告していた。全体として、今年11か月間で国内では140万台を超える自動車が売れた。ロシア国民たちはクレジットで車を買い始めたのだ。国家クレジット局のデータによると、今年の10か月間でほぼ4千億ルーブルの自動車ローンが組まれ、この数字は昨年の数字より事実上40%も高い。
実質所得と実質賃金の差は、実際には国民のグレーな所得ないしは申告されていない所得と関係があるのかもしれない、という見方を<アロル ブローカー>のアナリスト、キリール・ヤコヴェンコは除外していない。
『賃金の上昇と所得の減少という統計を説明するポイントは二つある。ロシア国民自身も監督諸機関も認めるところだが、国民の所得の伸びよりも実際的な物価の上昇の方が高いということ。もう一つのポイントは、国家の仕事の効率が上がった、つまり税務署の仕事ぶりが向上して公務員の給与に色が付いたということだ』と<ソリッド マネージメント>社のネット開発部長セルゲイ・ズヴェニゴロツキーは見ている。
しかしながら、グレーの賃金が白いセクターに流れ出たことだけが、実質所得が伸びていない原因ではない。『所得は賃金労働だけではなく、例えば、銀行預金からも得られる。昨年は銀行が預金金利を引き下げ始めたので、預金者が手にする利益も減った。来年はさらに減るだろう』と、<テレトレード>社のアナリスト、ウラジーミル・チェルノヴァイは言う。国民の不動産収入も減った。『住宅価格が下がったこと、不動産市場の回転が悪くなってマンションや一戸建てを売却するのが難しくなったことで、不動産収入も減っているのだ』と彼は続けた」

景気は回復している、賃金は上がっている、と言われてもその実感はなく、格差の広がりと固定化を感じるばかり、というのは何もロシアに限られたことではありませんけれどね。

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