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第4期目プーチン政権の経済政策を予測させるクドリンの報告書

プーチン政権第4期目の経済政策を予測させる報告書として待たれていたものです。
アレクセイ・クドリン率いる戦略構想センターが、<国有財産の有効な経営・民営化に関する報告書>を発表しました。
2月6日付コメルサント電子版(https://www.kommersant.ru/)の記事でご紹介します。

「戦略構想センターが、待ちに待たれていた報告書の一つ<国有財産の有効な経営>を発表した。国家経済の核は維持したうえでの民営化がテーマである。主要な構想は内容においては相当に慎重だが、提案においてはかなりラディカルだ:経済における直接的な国家の役割の縮小期限2035年までと指令的に決める、経済における国家の間接的役割を制限し、『根拠付けできなければ売却せよ』という原則で国家セクターの核を判定する、国家資産の維持がどういった目的を追求しているのかを一つ一つ挙げたうえで、必要とあれば売却する、等々。
戦略構想センターの<民営化に関する報告書>は、<大統領選挙後>の新期政権にとって待ちに待たれたクドリン報告書の一つである。戦略構想センター現所長は、2013年から2014年にかけても、2018年の大統領選挙後は大幅な民営化に回帰する必要があると説いていた。2014年から2017年にかけての様々な出来事(内政の事実上の方向転換、原油価格の暴落、<ロスネフチ>の支配株売却と同社を巡る取引事情)により、ホワイトハウスの金融・経済ブロックは民営化推進派にとどまったにも関わらず、形の上で民営化を推し進める可能性は著しく低下した。同報告書は、ロシア連邦大統領府付属ロシア国民経済及び国務アカデミー、ガイダル研究所、ロシア科学アカデミーの執筆者グループが作成したもので、中でもアカデミー会員レヴォルド・エントフとアレクサンドル・ラディギン教授が著名である。
政治的観点からすればこの報告書はことさら正しく、誰かに<非国有化宣言>と見られることはよもやあるまい。もっとも執筆者たちは、経済学は今、企業を民営化するか、あるいは国営化を維持するかの賛否を主張するのにどういった論拠を持っているか、という問題について極めて詳しく解説している。近年の<民営化懐疑論>に対する執筆者たちの主要な反論点は、世界で力をつけつつある新たな民営化の波であり、ロシア連邦がその波に乗る可能性だ。現在の国営セクターのモデルでは、第一にマネージメントが行き届かず、支出が増大する恐れがある。
経済における国営セクター成長の歴史もかなり幅広く記述してある。ロシア連邦大統領府付属ロシア国民経済及び国務アカデミーのデータに基づく執筆者たちの計算によると、2006年から2016年にかけて国民総生産に占める国営セクターの割合は39,6%から46%まで増えた。この成長の基本的メカニズム(別バージョンの評価では2017年度にロシア連邦国民総生産に占める国営セクターの割合は70%となっている)は、国家が管理する組織の民間への売却量が拡大したからであり、国営セクターの数そのものは減少している。一方報告書は、2005年からの銀行クレジットの国有化の問題についてはあまり検討していない。
報告書の提案はかなりラジカルで先鋭的だ。民営化を拡大する施策の六つのブロックでの主眼は『根拠づけできなければ売却せよ』というシステム的な原則であるように見える。
2024年までに個々の国家資産に『合目的的な機能を付与する』ことが提案されている。理論的には、そうすれば国家はその機能を遂行するために何が必要かを判定することができ、不必要なものは売却すればよくなる。2018年度に、『民営化のために現在閉鎖されている企業の限られた完全なリスト』を作成することが提案されている。今のところこのリストに入っていないすべての国家資産が、提案されたシステムの対象となる。さらに、2019年度・2024年度・2035年度と一貫して国家経済の核を縮小する三つのリストを作成することが提案されており、このリストを基盤に売却プランを決める、としている。
さらにもう一つの大きなブロックが、国家セクターの増殖の制限だ。これは、うまく進んではいないがすでにホワイトハウスでも検討されており、国家企業が新たな競争市場に進出し、非系列系の資産を獲得することに障壁を設けるという提案である。目新しいのは、国が25%以上の株を保有する企業の子会社や従属銀行が民営化に参加することを禁止し、国が50%以上の株を保有する企業にはいかなる割合であれ民間企業の株を買うことを禁止する点だ。分野別の民営化戦略は報告書に添付してある。
報告書の基本的な問題点は、国家資産の有効性が採算性と投資計画の規模によって評価されているところでの、ここ数年の実践との矛盾である。国家セクターの管理局員たちのモチベーションの一つは、国家ビジネスあるいは管理ビジネスの拡大とグローバル化だ。しかるに、政府内の彼らの反対者たちは<新たな民営化の波>を組織していくことを正当化していない。報告書の強いテーゼは、まさに彼らに対して向けられているものである。国家がこうした形で経済に参加する場合、市場の調整よりも直接的な管理を常に好むものだからだ。」

折しもロシア中央銀行は、昨年12月15日に開かれた幹部会で、2017年初頭には10、00%だった政策金利を年7,5%にまで引き下げる決定を行っています。インフレ率は安定して低いレベルにあり、インフレ予測は次第に下がってきていて、2018年の年間インフレ率が4%を超す可能性は低まっている、と強調しました。
2月9日付のインタファクス通信によりますと、「短期的なインフレリスクは弱まった。このことにより、経済的リスクとインフレリスクのバランスは、経済的リスクの方に若干傾いた」と強調、そのほかにも、グローバルな金融市況の不確実さが強まることにも注意を喚起し、適度に厳しい政策から中間的な金融・貸出政策への移行は2018年度に完遂する、と言明しました。「一時的ファクターと並んで、物価の上昇を補足的に遅らせることに恒常的行動のファクターも寄与している。恒常的行動のファクターがインフレ動向に与える影響は、これまで評価されてきたよりも重要なのかもかもしれない」いう点も、初めて認めています。
「2017年11月に工業生産が縮小した後、12月には持ち直した。生産者たちの意欲は比較的高いレベルに保たれている。今後は実質賃金のアップを背景とした内需拡大と、世界経済の成長率上昇が彼らを支えるだろう。失業率は、過剰なインフレ圧力を生まないレベルにある」と結論付けています。
比較的安定したロシアのマクロ経済運営を評価する声は国外でもありますが、こうした<安定性>を踏まえて、ロシア経済は2018年のギアチェンジをもくろんでいるのでしょうか。


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